
暮らすように働く「リビングワーク」を提案する3回目。今回は自宅のワークスペースに取り入れたい、家具やプロダクトを幾つかピックアップ。セレクトの視点についてご紹介します。
インテリア&プロダクトデザイナーの小林幹也さん曰く「せっかく家で仕事をするならば、普段のオフィスと同じにする必要はないと思います。自分がリラックスできて快適で、かつ生産性も上がる仕事環境は何か、改めて考えてみるのもいいでしょう。これを機に家具を新しくする場合には、空間の中の収まりや、長時間使用してストレスを感じないサイズや佇まいであることも大切です」。
では、まずはワークステーションの核となるデスクから見ていきましょう。小林さん自身は自宅だと「ほとんどソファの上で仕事をする」とのことで、特に専用のワークデスクは置いていないそう。
気分転換のため、時々ダイニングテーブルやソファを使う可能性も考慮すれば、新たにデスクを用意する場合、サイズは比較的コンパクトなもので十分。それよりも既にある家具とマッチするシンプルなデザインで、素材も日本の住環境になじむウッドベースをお勧めします。
そして可能なら、デスクの下に収まるドロワーを揃えると大変便利。仕事関連の道具一式を1カ所に集約できる上、キャスター付きならワークスペースの移動先に、作業環境をそのまま持ち込みやすい点も見逃せません。
高機能なオフィス用デスクチェアは、家の中では大きすぎる場合が大半。奥行の数センチの差で、後ろの家具や壁にぶつかったりするストレスも出てくるので、見た目のバランスとともにサイズは正確に吟味する必要があります。またハードな印象のクロームやガラス、レザーなどの素材も日本建築にはマッチしづらいので要注意。小林さんによると「テーブルの天板と座面との高低差が30cm以内というのが理想。ホームユースに近いものだとしっくりきます」。
小林さんは自宅の場合、仕事は「ほぼソファの上」だそうですが、PCを使うなら、やはりテーブルは準備したいもの。スペース的に難しければ、飲み物や資料を置いておく“余白”だけでも欲しいので、ソファを棚やキャビネットの近くに置くのがいい。作業効率が格段に違います。
「新しいアイデアが欲しいときは、まず本を見に行きます」という小林さん。知識やイメージとの思いがけない出会いをもたらすクリエティブな場として、自宅にも本を置くスペースは何らか確保したいもの。本棚を選ぶ際には、本を並べるとどうしても全体としてボリューム感が出てしまうので、見た目が少しでも軽くなるデザインや素材のものがお勧めです。
一方、仕事中に周りが気になるような場合は、手軽なパーティションを活用するのも一つのアイデア。来客時やデスクワーク中など空間を仕切りたいときに場所を選ばず使え、生産性もアップします。
デスクの上の“余白”をどう使うか──これこそリビングワークの最も基本といえます。限られたスペースをより創造的&生産的に、快適に、そして自分らしく……。最後はデスク周りであなたの仕事のクオリティアップを助けてくれそうな、小さな相棒たちを紹介します。
3回にわたってお伝えしてきた「リビングワーク」という働き方。これは単に仕事場所を変えるというだけでなく、「自分らしい空間とは何か、何が心地いいのか」を自分と向き合い思考する、大切な機会でもあります。あなたも是非、楽しみながら新しい自分を発見してください。
インテリア&プロダクトデザイナー。
2006年に活動スタート。手がける分野は家具、プロダクト、テキスタイルからモビリティ、インテリアまで幅広い。国内外のメーカーとの協業多数。現在は東京とバレンシアに拠点を構える。2018年、オリジナルブランド「IMPLEMENTS by mikiya kobayashi」のショップをオープン(東京都目黒区碑文谷5-28-8/tel.03-6421-3925)。
www.mikiyakobayashi.com
文◎友永文博
撮影◎太田隆生
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在宅ワークの方におすすめ、働く部屋に吸音材を。吸音材は音の反響を抑える効果があります。OTTO Wall DECOは工業用で使われる素材を家庭用にアレンジしています。付属の両面テープで壁に貼るだけの簡単DIY商品です。