リビングワークで快適な仕事環境を 第2回

家だからこそできる! 自分らしい「仕事場」づくり

空間
リビング・寝室・居室

専用のワークスペースは必要?

「1回目でお話したように、せっかく家で仕事をするならば、普段のオフィスの仕事環境に近づけなくてもいいのでは、というのが僕の意見です。場合によってはリビングワークをより広く捉え、自宅だけに限定せずとも、近くのカフェ、図書館などノマド的ワークスタイルも含めて考えても楽しいと思います」

 そうはいっても、書斎のような専用スペースのほうが仕事がはかどる、という方もいらっしゃるはず。小林さんも一番大切なのは「その人のコンディションに合わせること」で、人によっては「専用のワークスペースを確保すべき」と提言します。
 そこで一つの提案は、家に仕事場を設ける際にはできるだけ部屋のコーナーなどに押しやらず、周りに“余白”を感じられるスペースにすること。例えば、吹き抜けなど開放感のある空間を活用したり、リビングの一角をパーティションでゆるく仕切る、といったアイデアです。

窓のある壁面というアイデア

スタイリッシュで快適な空間を演出する「デコマド」。左:壁に代わって、大きなガラスのパーティションを用いたタイプ。右:窓台に設置したタイプ。

 実はLIXILにも「デコマド」という、室内用窓のプロダクツがあリます。これは壁の代わりに「窓」で空間を仕切るという発想。壁の一部、あるいは全体を透明・半透明の窓にすることで、光や風を取り込んだり、家族の気配を感じながら仕事をすることが可能。圧迫感なく、十分に個室感を生み出すことができるのです。

より自分らしいワークスペース構築法

事務所のマスコットの愛犬2匹、サン(左)とムク。

 ではここからは、小林さんが普段仕事をしている事務所スペースに潜入。リビングワークの達人ならではの空間作りとともに、創造性・生産性を上げるヒントを披露してもらいました。

 まず4階フロアに足を踏み入れた途端、2匹の愛犬がお出迎え。スタッフも数人働いていて、小林さんのデスクは一番奥。なのですが、窓に面していて、デスクからは気持ちのいい眺望を見渡せます。

 「早朝に仕事をしていると(小林さんは毎朝4時半起き!)、空の色が変化し、遠くで電車の走る音が聞こえる。それだけでも結構、満たされた気分になりますよ」

 そして室内中央には円卓が置かれ、小林さんはそこで仕事をすることも多いのだとか。自分のデスクからくるりと振り返り、キャスター付きチェアのまま移動したり、バランスボールに座り変えたり。これだけでも、また全然感覚が違うと言います。

フロア中央に置かれた円卓。スマホで調光可能な照明を幾つか備えるが、日中は極力使わないそう。「自然光のほうが心地いいし、仕事中も時間の変化を感じられるのが好きです」

「仕事場で椅子の占める割合は大きいです。これは、ジロフレックスというスイスメーカーのもの。廃盤ですがオークションで購入し、好みの布地に張り替えました。座り心地では、もっといいものはあるのでしょうが、僕はこの椅子の佇まいが気に入った。前回も言ったように、椅子は機能性のほか、空間の中での収まりの良さも大事。特に生活と仕事の場を分けないリビングワークには、ホームユースに近いものが合うと思います。そこで長く過ごすわけですから、一緒にいてストレスのないものがいい」

発想を豊かにする遊びの要素

小林さんは最近バイクの中型免許を取得。さらに現在、大型免許にも挑戦中。新しいことへの挑戦は視野が広がり、仕事に結びつく場合も多いとか。

 また各所で目につくのが、スケボーや水鉄砲、バイクのヘルメットなどなど、一見、仕事と無関係のアイテムたちです。その点について小林さんに尋ねてみました。
「僕自身は、仕事と遊びの間に差を設けません。暮らしの中で実際に使えるものをデザインしなければならないので、日用品から遊び道具まで幅広く、あえて周りから排除していないですね。それらを手に取ることで、アイデアのリアリティを確かめたり、発想を得たり、もちろん気分転換にもなります」

 確かに、そんなクリエイティブソースを身近に揃えておけるのも、リビングワークの醍醐味かもしれません。ほかの人には単なる遊び道具でも、自分の創造性を刺激するピースの一つであれば、気兼ねなく周りに取り込んでみる──是非試してみてはどうですか。

事務所には、出会いの仕掛けが満載

動物のほかグリーンが近くにあると、命の気配が感じられ、時間が流れ始める。仕事をする上でもそんな自然のリズムが不可欠。

階段途中の棚は、その時に気になるクリエーションが並ぶギャラリー。

 そのほかにも事務所フロアには、レザー製のシーソー遊具が置かれたり、途中の階段壁面には本棚のほか、多彩な雑貨やオブジェが並ぶ棚が設えられていたり。
 さらに私たちを出迎えてくれた2匹の愛犬は、毎日何らか小さな事件を起こすそう。そんな偶然の発見や出会いが起こりそうな、多彩な仕掛けが至る所に潜んでいるようでした。

 皆さんも自宅を仕事場にするならば、会社のオフィスに近づけるのではなく、生活空間の延長として捉える。そしてそこで過ごす時間を丸ごと楽しむために、自分が自分らしくいられる選択肢を増やしてみる──そうすれば、あなただけのリビングワークのスタイルが、必ず見つかるはずです。

Living Deli

おうちでも楽しく仕事のしやすいワークスペースが欲しい!そこで、今回は、快適なワークスペースを作るアイディアをインテリア商品と一緒にご紹介させていただきます。

詳しくはこちら

お話を伺った方

小林幹也(こばやしみきや)さん

インテリア&プロダクトデザイナー。
2006年に活動スタート。手がける分野は家具、プロダクト、テキスタイルからモビリティ、インテリアまで幅広い。国内外のメーカーとの協業多数。現在は東京とバレンシアに拠点を構える。2018年、オリジナルブランド「IMPLEMENTS by mikiya kobayashi」のショップをオープン(東京都目黒区碑文谷5-28-8/tel.03-6421-3925)。
www.mikiyakobayashi.com

文◎友永文博
撮影◎太田隆生

リクシルオーナーズクラブ(年会費無料)