
料理家・田中美奈子さんが提案する「ボックスフード」。それは名前の通り「お弁当スタイルをベースにしたボックス入りの料理」。そこには食事を楽しくするいろいろな魅力が満載です。“いえ食”の機会も増えた昨今、毎日の食事の可能性を広げるアイデアとして、取り入れてみてはいかがですか。

料理を好みの容器に詰めたボックスフード。たったそれだけなのに、あえて作り方もシンプルなのに、食べる場所やシーンを選ばず、さらにボックスを開けるときにちょっとした嬉しさがあったり……そんな食事の楽しみや自由度が一気に広がります。ボックスフードの魅力について、まずは下記にまとめてみました。
1.作るのが楽しい。
2.食べるのが楽しい。
3.作る人の個性が出せる。
4.食べる場所を選ばない。
5.食べるタイミングを選ばない。
上の5つを順に見ていきましょう。
1つ目の「作るのが楽しい」は、シンプルな調理法で、手軽に簡単なメニューを選んで、作ること自体を楽しみましょう、ということ。
実は5つ目の「食べるタイミングを選ばない」とも関係があります。お弁当の醍醐味として、冷めても美味しく、時間を経ても変質しにくいことがマスト。そのため時間のかかる煮込みなどは避け、旬の素材を使って、その美味しさをダイレクトに味わえるメニューを優先してください。
2つ目の「食べるのが楽しい」は、1つのボックスの中に複数の料理を詰めるので、小鉢を頂く感覚で食べ飽きないし、気分も上がります。そういった点では、料理は凝らなくて十分。代わりに、たとえばフルーツを詰めるだけでもいいので、品数を少し増やすことを心がけます。
3つ目の「作る人の個性が出せる」については、好みの容器にお手製の料理を詰めていくのは、身近なアートピースを完成させるような楽しみも。どんな容器にしようか、何の料理をどんなふうに詰めようかと、小さなボックスの中に作り手の個性が色濃く表れます。
また、4つ目の「食べる場所を選ばない」は、容器入りなので持ち運びが簡単。食事場所はダイニングである必要はありません。自宅のワーキングデスクで、リビングのソファに腰掛けながら、あるいはベランダで日光を浴びながら、といった多様なシチュエーションが可能。おかげで仕事がはかどったり、気分転換になったり、食事の幅も広がります。
そして最後の「食べるタイミングを選ばない」は大切な点で、前述の通り、お弁当の延長ということから、調理後、時間が経って食べる場合も考慮。そのため火入れやソースの作り方などに少々工夫が必要です。一方で、作ってしまえば食事のスタイルはとても自由。具体的な注意点は後ほど、今回のメニュー内容を紹介する際に触れたいと思います。

この4切れにピーラーで削ったズッキーニ1本分。野菜が手軽に取れるのもサンドイッチの魅力。
いかがですか。作るのも、食べるのも手軽で美味しそうではないですか。
では早速、田中さんにならってボックスフードを1つ、作ってみましょう。
今回ご紹介するのは、人気の食パンを使ったサンドイッチボックス。ライス主体のものと比べ、片手でつまめ、ご飯を炊く手間もなく便利で手軽。サンドイッチはどんな野菜とも相性がいいので、パン好きな田中さんもよく作るそうです。
構成する主なメニューは「ズッキーニとハムのサンド」「ゴーヤのリングフリット」「ハーブマッシュポテト」の3品。
レシピは、各料理を簡単に説明した後、最後にまとめてお伝えします。
まずは「ズッキーニとハムのサンド」から。これは、よくあるきゅうりとハムのサンドイッチより肉質の滑らかなズッキーニを使っているので、食感が抜群。普段、生で食べる機会の少ないズッキーニのフレッシュな美味しさを味わえます。味付けは、ハムに合う、甘酸っぱいハニーマスタードで。

今回は衣に味付けしていますが、好みの味のディップを付けて食べることも。フリットは食べやすさもうれしい。
また「ゴーヤのリングフリット」は、フライにすることで苦味のあるゴーヤが食べやすくなります。さらに衣自体にコンソメで味付けをしているので、塩などで頂くより、さらに箸が止まりません。
そして「ハーブマッシュポテト」は、ハーブの香り豊かで、普通のマッシュポテトよりかなりドライな食感が特徴。時間をおいても水っぽくなりません。これはポテトを一旦、粉吹きにして水分を飛ばした後に、生クリームやバターを入れるから。美味しさをキープするための留意点の1つなのです。
さあ、次はあなたの番。この記事の最後にまとめたレシピを参考に、3品をぜひ作ってみましょう。どれも驚くほど簡単です。

ダイニングのほか、仕事途中のデスクで、息抜きにベランダで、と食べるシチュエーションの幅も広がる。
食事を豊かにするために、時間をかけ手のこんだ料理を出すことも一つの方法。ただボックスフードに関しては、料理はあえてシンプルに、その分、メニューや食べる場所・タイミングなどの自由度を生かし、調理から始まる食事時間全体をちょっとしたイベントのように楽しむスタイル。
例えば、ボックス内の料理メニューも、見た目の色のバランスから考え、大人っぽく同系色でまとめてみる。あるいはアトランダムに詰められた隣り合うおかずを一緒に口にして、予想外の味のハーモニーを楽しむ。それぞれが思い思いに、そんな新鮮で自由な食事の楽しみ方を発見してみてください。
ハニーマスタード:
A:
A:
料理家・フードディレクター。DEAN & DELUCAカフェマネージャー等を経て、カフェレストラン『LIFE KITASANDO』オーナーシェフ&バリスタに。現在は主に飲食店のプロデュースやメニュー開発を手がける。また女性誌の撮影現場やアパレルブランドのイベント会場へのケータリングも人気。著書に『ケータリング気分のBox Food』(文化出版局)、『ティードリンクの発想と組み立て』(誠文堂新光社)など。
http://life-kitasando.com/
文◎友永文博
撮影◎太田隆生