常備菜でパパっと夏ごはん[第4回]

しっとり柔らか鶏ハムアレンジ

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鍋でも炊飯器でもOK

 鶏ハムを作る工程はシンプルです。鶏をマリネしてから成形し、加熱をする。
 これだけですが、そのすべての工程にポイントがあります。一番肝心なのは加熱。今回は、鍋で作る方法と炊飯器で作る方法の2種類を紹介しますが、肝心なのは「温度を上げすぎず、しかしきちんと中心まで加熱をすること」です。

 あまり高い温度で加熱すると、肉は固くなります。しかし、加熱時の中心温度が低いと、サルモネラ菌やカンピロバクターなど、食中毒を引き起こす細菌を死滅させることができません。きちんと一定時間加熱することが衛生的には重要なのです。

 ポイントは中心温度。厚生労働省の指針では、中心温度が75℃以上で1分間以上加熱することが望ましい、とされています。これと同等の殺菌効果をもたらすためには、「70℃で3分」「67℃で8 分」「65℃で15分」……などという基準を満たせばいいと研究で解明され、一般的に食品業者の間ではこうした条件で加熱をしています。

 一方で、肉を柔らかくするためには中心温度が67℃を越えないようにすることが理想的だと言われています。

 これらを総合して、鶏肉の場合は中心温度が60℃〜65℃で15分以上加熱することで、細菌を殺し、同時に柔らかさを保てるのです。

鶏ハムを作る


【材料】(作りやすい量)
 鶏肉(胸またはもも肉)……2枚
 塩……小さじ1〜2
 砂糖……小さじ1〜2
 ハーブ・胡椒(好みのものを)……適宜

 

【作り方】

[1]鶏を塩と砂糖でマリネする

 使う鶏肉は、お好みで胸肉でももも肉でもかまいません。胸肉は均質な筋肉の塊で、脂肪分が少なく、タンパク質が多い部位です。味わいは比較的淡泊です。一方、もも肉は脂や筋が多いのですが、その分コクがあり、深い味わいが特徴です。

 どちらを使うかはお好みで。胸肉なら均一な仕上がり、もも肉の場合は固さにばらつきがありますが、それが食感の楽しさにもつながります。やや濃いめの味に仕上がります。
皮を残すか外すかもお好みです。もも肉は包丁で軽く筋の部分を切っておくといいでしょう。

 また、肉が厚い部分にはまな板と水平に包丁を入れて開き、厚さを均一にしておくと、仕上がりが良くなります。竹串やフォームなどで肉に穴を開けると、味がしみ込みやすくなります。

 塩と砂糖を鶏肉にまぶし付け、冷蔵庫で2〜3時間マリネします。砂糖は保水力があり、タンパク質の凝固を抑制する働きがあるので、鶏ハムをしっとりさせる効果があります。

[2]成形

 大きめに切ったラップをまな板の上に置き、マリネした鶏肉をキッチンペーパーなどで水分を拭き取ってからのせ、ラップの上でくるりと円筒状に丸めます。この時に、両端の厚さが薄ければ内側に少し折り込み、円筒が均一な太さになるようにしましょう。前述のように、あらかじめ分厚い部分を切り開いて平らにしておくと、きれいに巻きやすいです。

 ラップでくるんで成形したら、さらにもう一枚、上からラップをします。たこ糸で縛ったり、輪ゴムをする必要はありません。このまま15分くらいおき、お肉が室温に戻るまで待ちましょう。

 ハーブで風味を付けたい場合は、成形の際にハーブをまぶすといいでしょう。中に巻き込んでもかまいません。ローズマリー、タイムなどがよく合います。また、ここに胡椒を挽いてもパンチがきいておいしいハムになります。

[3]加熱<鍋を使う場合>

 室温に戻したら、ラップを巻いたまま鍋に入れ、かぶるくらいまで水を注ぎます。もし浮いてくるようなら、上にお皿などを置いて押さえましょう。

 火をつけ、中弱火で加熱します。沸騰したらごく弱火にして、10分ほど加熱したら火を止めます。このまま数時間放置して、自然にお湯の温度が下がるのを待ったらできあがりです。

[4]加熱<炊飯器を使う場合>

 鍋ややかんで85℃くらいのお湯を沸かします。室温に戻した肉をラップのまま炊飯器に入れ、かぶるくらいにお湯を入れたら、保温モードに。鶏肉が浮いてくるようなら、お皿などで押さえてください。

 1時間半ほどおいたら取り出し、粗熱を取ったらできあがりです。

 表面の水気を拭いて、冷蔵庫で保存すれば数日間楽しめます。また冷凍もできるので、何本か作っておき、常に1本を冷蔵庫で解凍させておくのもいいでしょう。

 鶏ハムはそのまま切って食べるもよし、薄くスライスしてラーメンや冷やし中華の具にしてもいいでしょう。袋麺の冷やし中華を茹でて、鶏ハム、パプリカのマリネラタトゥイユをトッピングすれば、夏のごちそうメニューになります。

アレンジ1:休日ブランチのパンサラダ

 ゆっくり起きた休日のブランチに、鶏ハムのサラダはいかがでしょう。食パンやパンドミーなどを2cm角くらいのサイコロ状に切って、オーブントースターでカリッと焼きます。鶏ハムも同じくらいの大きさにカット。サラダミックスやハーブ、半分に切ったミニトマトなどと和えてドレッシングをかければできあがりです。
 おすすめのドレッシングは、ヨーグルト50ccに大さじ2のマスタードと小さじ2の蜂蜜を加え、レモンやライムを搾り、塩と胡椒で味を調えたもの。上からレモンやライムの皮をすりおろして少し加えると香りが一層爽やかに。

 香ばしくカリッとした食感のパンとコロンとした鶏ハムの食感が楽しい一品。昼間からビールやスパークリングワインを開けたくなってしまうかもしれません。

アレンジ2:厚切り鶏ハムのステーキ、レモンソース

 冷たいままの鶏ハムばかりが続くと飽きてしまいます。そこで、鶏ハムを温かく焼き直してハムステーキにしてみるのはどうでしょう。

 厚さ1〜1.5cmくらいにスライスした鶏ハムを、油を少し敷いたフライパンで焼きます。
 別の小さな小鍋にレモン汁を1個分、鶏がらスープの素を小さじ2、はちみつ小さじ2、塩小さじ1/2、片栗粉大さじ1、水1/3カップを入れて弱火でかき混ぜながら沸騰させます。沸騰してきたら牛乳を1/2カップ加え、さらにかき混ぜソースにします。上からレモンの皮のみじん切りを散らしてもいいでしょう。

 夏の夜のディナーにぴったりの一皿になります。


レシピ考案・文◎坂井淳一(酒ごはん研究所)
撮影◎大西尚明
スタイリング◎吉田千穂

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