マスクや手指消毒だけでは防げない
コロナ禍でマスク着用や手洗い、アルコール消毒をまめに行うようになった結果、インフルエンザなどの感染症は急激に減りました。その一方、食中毒については、発生件数は減ってはいるものの、インフルエンザほど劇的に減少したわけではありません。
コロナ禍で食中毒が減ったと言われます。最大の理由は、飲食店の時短営業や休業だそうです。しかし、家庭内では頻繁に起きています。その原因は、大きく4つに分かれます。
1.アニサキスなどの寄生虫
家庭内で起こる食中毒の原因として一番多いのが、アニサキスという寄生虫によるものです。
アニサキスは、サバ、カツオ、イワシ、アジなどの、いわゆる「青魚」と言われる魚に多く寄生します。また、イカも寄生されやすい生物です。
魚介が生きているうちは内臓に寄生していますが、死ぬと身に移動するといわれています。
魚屋さんで買ってくるときは、なるべく鮮度のいい物を選びましょう。
また、釣った魚を食べるときは、釣り上げたその場で内臓を取り出すことをお勧めします。
2.植物性自然毒
主に毒きのこなどを食べたときに起こす食中毒です。
山できのこを採取して食べるときは、詳しい人に判別してもらうことが肝心です。
3.動物性自然毒
ふぐなどが持っている毒で食中毒になるケースも頻繁に起きています。ふぐ毒中毒は、免許を持った人がきちんと処理したものを食べることで防げます。
4.細菌
カンピロバクター、ぶどう球菌、サルモネラ菌などが引き起こす食中毒は、食品がもともと持っている毒や寄生虫由来の中毒とは違い、食品の衛生管理がきちんとされていないと、さまざまな食品で起こりえます。
また、家庭で最も気をつけたいのも細菌性の食中毒です。ほかの3つは知識があれば防げますが、細菌性の食中毒は、食品管理をきちんとしないと、いつかかるか分からないからです。
では、どうしたら細菌性の食中毒を未然に防げるのでしょうか。
テイクアウトのフードは早く食べる
コロナ禍で人気が出たデリバリーサービスやテイクアウトの料理。おいしい料理もたくさんあるし、出来たてが届くのも嬉しいところです。
しかし、これからの季節、温かいデリバリーやテイクアウトフードは、気をつけないと食中毒の原因になりやすいのです。
食中毒の原因となる細菌は、20~50℃の「生温かい」状態で繁殖しやすくなるといわれています。調理したての料理は熱々でも、徐々に冷めていきます、その時間が長ければ長いほど、細菌は繁殖します。
買いものを工夫する
食材を買うときにも注意が必要です
スーパーなどで買いものをすると、大抵は店の入口に野菜売り場があり、奥に肉や魚のコーナーがあります。その順番で買いものをしていくと、野菜→肉・魚→冷凍食品→乳製品→雑貨や乾物類……という順番で商品を取ることになります。
けれど、肉や魚、牛乳や玉子、冷凍食品などは、低温で保存することが大原則です。野菜を買ったとあとは、乾物や雑貨などを選び、乳製品、冷凍食品、肉、魚といった順番に回ることで、食品の温度がなるべく上がらないようにできます。
また、無料で氷をもらえる場合がありますから、生ものにはその氷を当てましょう。
肉や魚は、それぞれビニール袋に小分けにするといいでしょう。
マイバッグも、保冷機能がついたものをひとつ持っているとより安心です。
冷蔵庫を過信しない
買いものから帰ったら、まずは手を洗ってアルコールなどで消毒し、生ものを冷蔵庫に入れます。
けれど、冷蔵庫に入れれば一安心、というわけではありません。
冷蔵庫は5℃以下、冷凍庫は-15℃以下といわれますが、扉を開ければ室内の暖かい空気が入り、庫内温度も一気に上がります。
肉や魚のうち、その日に使わないものは、冷凍してしまうか、チルド室に入れるといいでしょう。
また、冷蔵庫内は、定期的に掃除と除菌をすることをお勧めします。掃除をすることで、庫内に残っている古い食品を処分できます。気がつかないうちに傷んでいたり、細菌が繁殖していたりする危険性があります。1週間から10日に一度は、庫内を空にして、アルコールなどで除菌をするのもお勧めです。
冷凍庫も「凍っているから安心」とは限りません。頻繁に開け閉めをしますから、知らないうちに肉や魚が傷むことがあります。
洗える食材は洗い、手指や調理器具は消毒
調理をする時には必ず手洗いとアルコール消毒を。調理をしている最中にも、肉や魚などを触ったらこまめに洗ってください。
肉や魚の菌は、焼けば死滅しますが、その菌が付いた手でサラダをつくったりすると、生きた菌がそのまま口に入ります。
まな板は雑菌の温床になりますから、普段はよく洗って乾燥させておき、使う前に軽くアルコールスプレーをするといいでしょう。肉や魚を切る場合はその都度洗ったり、まな板を変えたりすることも大切です。
その他の調理器具も、こまめに洗って清潔にしましょう。広口瓶などの保存容器に何かを入れるときは、あらかじめ容器を熱湯で煮沸消毒し、使う直前にアルコールスプレーで殺菌をしましょう。
手が荒れやすい方は、洗剤やアルコールを避けがちですが、保湿ケアは調理が終わってから。
コロナ禍でアルコールを頻繁に使うプロの料理人の中には、仕事後にクリームではなく、保湿美容液をたっぷり塗る方もいますので、参考にしてみてください。
冷凍食材の解凍は冷蔵庫内かレンジで
冷凍しておいた肉や魚を室温で解凍するのは極力避けましょう。電子レンジを使って短時間で解凍するか、菌が繁殖しにくい冷蔵庫内で解凍するといいでしょう。
食品の加熱はしっかり
肉などを焼くときは、中心までしっかりと。中心を1分以上、75℃以上で焼けば、ほとんどの菌は死滅します。挽肉を使った料理、とりわけハンバーグなど、つなぎが入って水分の多いものは、中心温度が上がりにくいのでしっかり加熱することが大切です。
惣菜などが余った場合は、密閉容器に入れて冷蔵庫で保存し、食べる前には再加熱するように心がけましょう。
食品の安全管理には「やり過ぎ」ということはありません。この季節は食欲も落ち気味ですが、安全な食事をきちんと取ることで、梅雨を乗り切りましょう。
次回は、洗濯物の部屋干しのポイントについてお伝えします。
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