春キャベツを食べ尽くす! [第4回]

洋食屋さんの絶品ロールキャベツ

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日本の洋食の定番、ロールキャベツ

 嫌いという人はほとんどいないのに、案外家庭で作ることは少ないロールキャベツ。それは、手間がかかる料理だと思われているからかもしれません。確かに工程は多いですが、ポイントさえ押さえてしまえば難しい料理ではありません。また、一度にたくさん作れるので、冷凍しておけばお弁当のおかずに入れたり、何か一品足りないときにレンジアップして出したり、使い勝手もいいのです。

 味付けもさまざま。洋食店ではコンソメで煮込んだり、ホワイトソースで煮込んだりと、店ごとに特徴があります。今回ご紹介するレシピは、トマトソース。これは、昭和の時代に東京・荻窪にあった「アリスの店」という小さなレストランの大人気メニューのレシピです。トマトソースで煮込んだ細めのロールキャベツに生クリームを少しかけた一皿は、パンを添えて、トマトソースまできれいに食べきるお客さんがほとんどでした。

 懐かしいけれど新しい味のロールキャベツ、ぜひみなさんに食べていただきたいと思います。

キャベツをまるごと茹でる!

 ロールキャベツは、肉だねをキャベツで巻いて煮込みます。けれど、生のキャベツで巻くわけではありません。硬すぎて破れてしまい、きれいに巻けないからです。そこで、一度キャベツの葉を茹でてから巻くのですが、茹でる前に一枚ずつ葉を剥がすのでは効率が悪いですし、剥がしているときに破れてしまいます。

 洋食屋さんは、キャベツをまるごと茹でます。まず、芯の部分を包丁でくり抜き、たっぷりのお湯を沸かして、くり抜いた部分を下にしてまるごと茹でます。

 レードルなどで上からも熱湯をかけましょう。しばらくすると、一番外側の葉に火が入って、ぺろりと剥がれてきます。芯をくり抜いた部分に多少くっついていることもありますが、なるべく葉を破らないように外しましょう。ひっくり返して芯の部分を上にすると外しやすくなります。
 剥がれた葉は、中まで火が通っています。それを冷水に取って冷やします。十分冷えたら、ざるなどにあげて、水気を切っておきます。

肉だねを作る

 次は肉だねを作ります。材料をすべて混ぜるだけですが、いくつかポイントがあります。

 まずは、A(たまご、牛乳、パン粉、飴色タマネギ、みじん切りにしたピクルスとパセリ、ナツメグ、胡椒、短冊に切ったベーコン)を混ぜておきます。パン粉が牛乳などの水分を吸って柔らかくなります。これは「つなぎ」の役目を果たします。パン粉を入れないと、肉だねが固くなってしまいます。

 次に、冷蔵庫から取り出した挽肉に塩を加えて練ります。この時、手が温かいようなら、氷水に浸けて冷やしてください。手の熱で肉の脂が溶けるのを防ぎ、また肉だねは雑菌が繁殖しやすいので、それを防ぐためです。
 肉に粘り気が出てきたら、Aを少しずつ加え、全体を混ぜたら肉だねのできあがりです。
 実はこの肉だね、ベーコンを抜けば、ハンバーグのたねです。たくさん作って、ぜひハンバーグも焼いてみてください。ポイントはディルピクルスと飴色タマネギ、そしてナツメグです。

キャベツの芯を削ぎ切る

 ざるにあげておいたキャベツの芯を削ぎ切ります。
 これは、巻くときに葉脈の太い部分があると巻きにくいからです。大きい葉も小さい葉も削ぎ切りましょう。
 切り落とした葉脈部分は、みじん切りにして肉だねに加えると無駄が出ません。

肉だねを巻く

 キャベツを、お尻側を手前にして2枚重ねます。一番大きい葉と一番小さい葉から組み合わせます。中間くらいの葉は同じ大きさのものを2枚重ねます。こうすると、巻き上がったロールキャベツの大きさが揃います。

 肉だねをのせます。大さじ1、もしくは小さじ(ティースプーンもほぼ同じ分量です)3〜4くらいがちょうど良い量だと思いますが、お好みで。肉だねの量が多ければ食べ応えのある大きなロールキャベツに、少なければ小さく細くて食べやすいものになります。

 葉の右端を内側に折り込みます。肉だねギリギリのところで2枚とも折り返すようにしましょう。左側は折り込まず、そのままにしておきます。

 手前から上にくるくると巻いていきます。この巻きをなるべくきつめにすることで、煮崩れにくいロールキャベツになります。

 片方の手でロールキャベツをそっとつかみ、もう片方の手の親指か人差し指で、折り返していなかった方のキャベツを押し込みます。慣れると簡単です。お子さんでもできますから、家族で一緒にやってみましょう!

 トマトソースを入れた鍋の中に、隙間ができないように並べます。隙間があると、煮込んでいるときに巻きが崩れやすいからです。上からもさらにトマトソースをかけて、弱火で焦げ付かないように煮込みましょう。30分〜1時間煮込めばできあがりです。長く煮込むほど、キャベツは柔らかくなります。洋食屋さんでは5時間くらい煮込みます。キャベツが柔らかくなり、さらにおいしくなります。

トマトソースは裏ごしを

 トマトソースはあらかじめ作っておきましょう。
 スライスまたはみじん切りにしたタマネギを食用油で透き通るまで炒め、トマト缶とローリエを入れて弱火で30分〜1時間ほど煮込むだけです。煮込み時間を長くするほど、トマトの酸味が飛んでやさしい味わいになります。
 これで完成ですが、丁寧に作るなら、このあとトマトソースを裏ごしします。ローリエを取り出してから裏ごし器やざるでこしても良いですし、ハンディミキサーやフードプロセッサーで滑らかにしても良いでしょう。

煮込んだら仕上げは生クリーム

 煮込んで熱々になったロールキャベツを器に盛り、上からソースをかけて、さらに生クリームを大さじ1くらいアクセントとしてかけます。飾りにハーブなどを添えるといいでしょう。

 赤ワインにもよく合います。フランスのローヌや、イタリアの完熟ぶどうで作った甘い香りの赤ワインがぴったりだと思います。
 1玉で10個以上のロールキャベツが作れるので、冷凍用のフリーザーバッグに小分けにして保存をしても良いでしょう。また肉だねが余ったら、ミニハンバーグにして焼いてから冷凍しておくと、お弁当のおかずなどに最適です!


レシピ考案・文◎坂井淳一(酒ごはん研究所)
撮影◎大西尚明
スタイリング◎吉田千穂

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