春キャベツを食べ尽くす! [第3回]

キャベツの春煮とパスタ

空間
キッチン
関心
レシピ季節

春ならではの食材で和風に

 春はさまざまな食材がふんだんに出てきます。野菜だけでなく、海産物もおいしい季節です。ハマグリやアサリ、そしてしらすも春が旬の食材です。そうした旬の食材を合わせて、辛子のきいた「煮きもの(たきもの)」を作りましょう。お酒にはもちろん、ごはんにもよく合います。

 もう1品は、新キャベツと新じゃがいもを使ったパスタです。イタリアではよく家庭で食べられるビアンコ(白=トマトを使わない)のパスタで、ポイントはアンチョビです。

キャベツの春煮


 【材料】(2〜3人前)
  キャベツ……1/2〜1/4玉
  しらす……1つかみ(カップ半分くらいを目安に)
  ハマグリ……5〜6個
   ※アサリでも可(10〜15個)
  水……400cc
  昆布……3cm角くらいを1かけら
  鰹節……ひとつかみ
  醤油……大さじ4〜6
  日本酒……大さじ4〜6
  酢……大さじ4〜6
  溶き辛子(チューブでも可)……大さじ2

 

 まずは、カツオと昆布でだしを取ります。鍋に水と昆布をひとかけら入れ、火にかけます。煮立たせないようにして、沸騰寸前になったら鰹節を入れ、火を止めます。5分くらいおいてから、ざるなどでこします。
 そこに、ざく切りにしたキャベツとしらす、醤油、日本酒を加え、弱火で10〜15分煮ます。煮上がりの判断は、キャベツの柔らかさ。ひとつ食べてみて柔らかくなっていたらOKです。そこに、辛子を溶いたお酢を加えます。

 最後にハマグリを入れます。ハマグリの口が開いたら煮あがりです。

 キャベツとしらすだけでも十分おいしくいただけます。ハマグリの旨みが加わると一層深みが増しますし、見た目も春らしく華やかになります。吸い地としてもとてもおいしいので、余ったらお蕎麦のつゆにしても良いでしょう。

 お酢と辛子は火が入ることでまろやかになりますが、酸味とほどよい辛味が、甘みを増したキャベツと絶妙のマッチングです。日本酒にもビールにもよく合います。

キャベツとアンチョビのパスタ

 2品目はキャベツとアンチョビのパスタです。

 アンチョビは、シコイワシなどの小さなイワシを塩漬けにしたものです。キャベツとイワシですから、実は、1品目に紹介した「春煮」と組み立ては同じだとも言えます。そこにもう一つ、新ジャガイモを仲間入りさせます。キャベツの原産地であるヨーロッパでは、キャベツとジャガイモを組み合わせる料理がたくさんあります。イギリスではバブル&スクイーズやコットランドのランブルディサンプス、アイルランドのコルカノンなど、その土地の料理があります。キャベツとジャガイモは好相性なのです。


 【材料】(2人前)
  パスタ……160〜200g
  キャベツ……1/4玉
  新ジャガイモ……小4個または大2個
   ※メイクイーンなどねっとり系のもの
  鷹の爪……1本
  ニンニク……2〜3片
  アンチョビ……チューブ5〜7cmまたはフィレ3〜4枚
  オリーブオイル……大さじ4
  塩……小さじ1弱(水の量に対して0.5%くらい)
  イタリアンパセリ……飾り用

 

 下ごしらえで、鷹の爪のヘタと種を取ります。ニンニクは皮をむいてお尻の硬いところを切りとり、包丁の腹で軽く潰します。ジャガイモはよく洗って芽があれば取り去り、大きいものなら1cmくらいの輪切りに、小さいものなら4つ切りにします。皮が気になる方はむいてもかまいませんが、皮の風味もおいしさですし、鍋の中で実が溶けにくくなるので、できれば皮付きをおすすめします。

 キャベツは2〜3cm角くらいのざく切りに。形はあまり気にしなくて大丈夫です。

 まず、たっぷりのお湯を沸かして、0.5%くらいの塩を加えます。1Lのお湯に対して小さじ1弱と考えましょう。2人前のパスタなら、2Lくらいお湯があるとおいしく茹であがります。また、ここに昆布をひとかけら(分量外)入れると、パスタの旨みがアップします。

 パスタを投入するタイミングで、一緒にキャベツとジャガイモを入れます。

 キャベツは茹ですぎと思うかもしれませんが、イタリアではキャベツなどの野菜はくたくたになるように煮ることがおいしいパスタを作るコツだと言われます。野菜は「具」ではなく、パスタを食べるためのソースだと考えているからです。

 パスタを入れたら、火は中火くらいに。あまりぐらぐらさせると、パスタの表面が荒れておいしさが損なわれます。なじんできたら、菜箸などでパスタがくっつかないように軽くほぐします。

 フライパンにオリーブオイルと潰したニンニク、鷹の爪を入れ、ごく弱火で温めます。この時、火が強いとニンニクや鷹の爪が焦げます。鷹の爪をずっと入れていると辛くなりますので、あまり辛くしたくない方は途中で取り出すと良いでしょう。

 写真では、北京鍋という片手の中華鍋を使っています。パスタをオイルやソースと絡めるのに、底が丸い中華鍋は最適です。

 パスタの茹で具合を見ながら火を入れていきます。パスタがゆであがる予定時間の1分くらい前に、アンチョビを入れます。チューブならそのまま、フィレを使う場合はあらかじめ包丁で細かく叩いておきましょう。アンチョビが焦げないように注意しながら、オイルの鍋の火を強めて熱くします。

 パスタは袋の時間通りきっちりと茹でます。オイル系のパスタは、最後にオイルと麺を絡めると、麺が締まるからです。あげる直前にジャガイモの火の入り加減をチェックしますが、1cm厚くらいのジャガイモなら7〜8分あれば十分火が通ります。

 ざるにパスタやキャベツ、ジャガイモをあけて、オイルが入った鍋に入れ、和えます。

 ゆで汁を入れて乳化する方もいますが、茹であげ熱々のパスタで、お湯を切りすぎず、オイルも熱くなっていれば、パスタに残っている水分で十分乳化します。もし和えていてしっとりしないようなら、鍋の中に残っているお湯を少し入れるといいでしょう。
 器に盛り、イタリアンパセリの柔らかい葉の部分をちぎって飾ればできあがりです!

 大皿に盛って取り分けるスタイルにすると、イタリアの家庭料理っぽくなりますね。
 今回のレシピは、標準的な量。もっとしょっぱいのが好きな方はアンチョビの量を増やすといいでしょう。辛いのが好きな方は最後まで唐辛子を入れっぱなしにしましょう。柔らかく煮えたキャベツの甘みと新じゃがの食感、パスタ、アンチョビの塩気と旨みが素晴らしい一品です。


レシピ考案・文◎坂井淳一(酒ごはん研究所)
撮影◎大西尚明
スタイリング◎吉田千穂

リクシルオーナーズクラブ(年会費無料)