
腸内環境を整えるには、善玉菌を増やすことがポイントです。そのためには、第1回でお伝えした「プロバイオティクス」と「プレバイオティクス」を組み合わせた食事が効果的。今回は、この2つを組み合わせ、発酵食品の良さをあますことなく摂取できる「鶏のベトナム風甘酒鍋」と「オートミールの納豆キムチ炒飯」を紹介します。レシピは管理栄養士の美才治真澄さんに教えていただきました。
乳酸菌やビフィズス菌、納豆菌など、生きたまま腸に届いて人間に好影響を与えてくれる菌(善玉菌)である「プロバイオティクス」は、腸内環境を良好に保ち、腸内の免疫機能を活性化して感染症を予防する働きがあります。これらの菌が入った食品を「プロバイオティクス食品」ということもあります。
そして、この善玉菌のエサとなって善玉菌を増やす物質が「プレバイオティクス」です。オリゴ糖や水溶性食物繊維がその代表です。プレバイオティクスはいわば、プロバイオティクスの働きを加速させる役割があるといえます。
麹菌発酵による甘酒はノンアルコールなので、子どもや妊婦さんも安心して飲める。
今回紹介する最初のレシピ「鶏のベトナム風甘酒鍋」では、「甘酒」(麹菌で発酵)と「白菜漬け」(乳酸菌で発酵)がプロバイオティクス食品です。
なお甘酒は、原材料に「米麹」「もち米」「麹」の表記があれば発酵食品ですが、「酒粕」と表示されているものは酒粕と砂糖を水で溶いて作られているため、発酵はしていません。
善玉菌のエサになるプレバイオティクスを豊富に含むまいたけ。
また白菜漬けも、浅漬けタイプは発酵していないので、原材料が塩と白菜だけのシンプルなものを使うといいでしょう。
お鍋の具材として一緒に入れたまいたけには、「プレバイオティクス」が豊富に含まれています。これはβ-グルカンという水溶性食物繊維で、免疫力を高め、抗がん作用があるとしても注目されています。β-グルカンはしいたけにも豊富ですが、そのほかのキノコ類にはそれほど多く含まれていません。
最近人気が高まっているオートミールもプレバイオティクス食品。
2品目の「オートミールの納豆キムチ炒飯」では、納豆、キムチ、ザーサイがプロバイオティクス、オートミールがプレバイオティクスです。オートミールの原材料はオーツ麦。日本語では「えん麦」といいます。文字通り麦の一種で、水溶性食物繊維のβ-グルカンが豊富に含まれたプレバイオティクスです。
最初のレシピは、ベトナムのローカルフードに着想を得た鍋料理です。ベトナムの田舎町には、どぶろくをベースにした鍋があります。甘塩っぱくて滋味深い現地の味に近づけるために、それに近いものとして甘酒を利用しました。
そしてメインの具材は骨付き鶏もも肉と白菜漬けです。「甘酒」「鶏肉」「白菜漬け」の組み合わせに驚く方もいるかもしれませんが、鶏肉を使用しているのでタンパク質も摂れますし、免疫力がつくだけでなく、コクがあっておいしいお鍋になるので、ぜひトライしてみてください。
袋入りの白菜漬けは、常温で置いておくと乳酸菌による発酵が進み、炭酸ガスが発生して袋が膨らんできます。発酵が進むと酸味が増しておいしさがアップするので、それをお鍋に使うにはうってつけです。白菜漬けは、一度開封したまま常温で置いておくとカビることがあるので、開封後は早めに使用しましょう。
鶏ももぶつ切り肉は、だしが出るよう骨付きにするのがポイントです。鶏肉とざく切りにした白菜漬けに、甘酒、日本酒、鶏がらスープの素を入れて煮ていくと、最初は白かったスープが濃いめのクリーム色になっていきます。30分ほど煮ると、甘酒に含まれていた麹が目立ってきますが、豆乳鍋のように時間が経つと分離することはないので気にしないでください。
異国風味を際立たせるため、薬味はゆず胡椒など「和」のものではなく、クレソンと香菜を使用しました。いつものお鍋とはひと味違った味覚を楽しみながら、免疫力を高めてください。
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2品目は、ご飯の代わりにプレバイオティクス食品のオートミールを使い、納豆、キムチ、それにザーサイという発酵食品をふんだんに使った腸にうれしいレシピです。
オートミールはダイエット食材としても、近年注目の食品です。水でふやかしてレンジで加熱すると「米化」して、まるでご飯のように食べられるためですが、今回のレシピでは、水でふやかすひと手間は省いて乾燥したまま使います。代わりに卵の水分を吸わせることで、ご飯のようになります。卵の水分は微量なので、粘りも出ず、パラっとした炒飯らしい仕上がりになるのがポイントです。
半熟状になった卵をオートミールに吸わせるように混ぜ合わせたら、端に寄せてスペースを作って、長ネギ、キムチ、ザーサイを鍋肌で焼きつけます。ネギは臭みが残らないようにしっかり火を通すのがコツです。キムチは水分を抜き、かつ焼き色をつけると風味がアップするので、ここでしっかり焼きつけます。納豆を含めて材料を一気に投入したいところですが、この一手間で出来上がりが違ってくるので、しっかり焼きつけてから納豆を入れましょう。ザーサイは炒飯と相性が良く、うま味も出るので使用しました。
まるで本当のお米の炒飯のような味わいを、ぜひ楽しんでください。
管理栄養士、フードコーディネーター、女子栄養大学生涯学習講師。香川栄養専門学校(女子栄養大学短期大学部)卒業後、(株)ダイエットコミュニケーションズにて荒牧麻子氏に師事。企業、メディアに向けたメニュー提案や栄養相談、料理教室、オーダーメイドケータリングなどを中心に活動を行っている。
撮影◎粟井信行(昭和基地 ¥50)
スタイリング◎藤井玲子(cooking Clocca)
文◎江頭紀子