SDGs時代のキッチンづくり[第1回]

スッキリ収納術でフードロス削減!

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まずは買い物の「ルール」を考えよう

 私たち一般消費者はフードロスを減らすために、どのようなことから始めればいいのでしょうか。

「まず最初に考えていただきたいのは買い物の仕方です。具体的には食材を買いすぎないこと。よくあるのが、買い物に行った時に、例えば『マヨネーズが切れていたかもしれない』と思い、買って帰ると『まだあった』というパターン。その積み重ねでマヨネーズだけが3、4本もあるという家庭も珍しくありません。

 買いすぎてしまうと使い切れず、気がつけば消費期限を過ぎて廃棄せざるを得なくなります。同時に在庫把握・管理も難しくなるので、気づかずに同じものを買ってしまう悪循環に陥りがちになります」

 つい買いすぎてしまった経験は誰でもあるでしょう。では、買いすぎを防ぐにはどうすればよいのでしょうか。

「在庫の数を決めておくことが重要です。例えばマヨネーズなら、『今使っている物プラス1本まで』というふうに、ルールを決めるのがお勧めです。在庫を棚卸しした時に、次を買うようにするとよいでしょう」

買い物前に冷蔵庫の中身をスマホで撮影

 買い物をする際にもいくつかのコツがあるといいます。

「買い物に行く前に、冷蔵庫や冷凍庫の中をスマホで写真に撮るのです。スーパーで食材があるかないか、足りているか足りていないか迷ったら写真を見ればわかるので、余計な物を買わなくて済みます。

 また、買い物の仕方に関しては、私はここ10年ほど肉や魚、野菜などの生鮮食料品を含め、ほぼすべてネットスーパーで買っています。自宅で冷蔵庫の中を見ながらスマホでポチポチ注文するので、ダブって買ったり、買いすぎてしまったりということがありません。手数料がかかりますが、買い物のための往復の時間や労力を考えると十分ペイできています。何よりフードロス削減に貢献できるのでおすすめです」

現状把握と在庫管理のため「見える化」を

 買い物後はどのようなことに取り組めばよいのでしょうか。

「最も重要なのは、食材の現状把握と在庫管理です。これを徹底してください。そもそも買いすぎてしまうのは、自宅の冷蔵・冷凍庫に何がどのくらい入っているのかを把握できていないからです。把握するためには、一目でわかるようにしておく必要があります。
 それができれば無駄なものを買う可能性が減るし、買った食材をしっかり使い切るので、フードロスが出にくくなるのです」

 食材の“見える化”のためには、冷蔵庫や冷凍庫へのしまい方を工夫しなくてはなりません。そのための基本ルールは2つあると、矢野さんは言います。

矢野さんが自宅の冷蔵庫で実践している「引き出し収納」。(写真提供:矢野さん)

「収納は大きく分けて、奥行きのあるタイプと深さのあるタイプの2つあります。まず、冷蔵庫のような奥行きのあるタイプは、“引き出し収納”にします。冷蔵庫の中に縦長のプラスチックのトレイを入れて、その中に食材をしまうんです。このトレイを引き出すことによって、奥に入れた食材を簡単に確認できる、つまり見えるようになります。使いたい時にトレイごと取り出せばいいので非常に楽ですし、冷蔵庫の開閉時間が短くなるので、節電にもなるんです」

 次に、冷凍庫のように深さがある収納は、すべての食材をカゴに入れ、立てて収納する“縦収納”がセオリーと、矢野さんは話します。

「冷凍食品を重ねて置くと、底のほうの食材の存在をすっかり忘れてしまって、何年も経った後に発掘されるという悲しい事態になりかねません。このような経験をした人も少なくないのではないでしょうか。縦収納にすればすべて見えるので、こうした事態を防ぐことができます。

矢野さんが自宅の冷蔵庫で実践している「縦収納」。(写真提供:矢野さん)

 ちなみに、トレイやカゴは100円ショップで売っているもので十分です。各家庭の冷蔵庫に合う形で組み合わせて使うとよいでしょう。
 この“引き出し収納”と“縦収納”を意識することで、冷蔵庫・冷凍庫に入れているすべての食材が視界に入る状態になります。これが現状把握、在庫管理の基本です」

 買い物用に在庫の写真を撮る際も、こうした収納をしておけば、中に何があるのかがわかりやすくなるので有効です。

 フードロス削減への取り組み、SDGsの目標12「つくる責任つかう責任」で挙げられている「2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食品ロスを減少させる」にダイレクトに貢献できます。

 そのほか、「2030年までに天然資源の持続可能な管理及び効率的な利用を達成する」「2030年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する」といった目標にも寄与できます。
 今回ご紹介した方法を、ぜひキッチンで採り入れてみてください。

 次回はフードロス削減を目指す収納の応用編。矢野さんおすすめの便利グッズもご紹介します。

SDGsを動画で学ぶ:
「内田篤人のSDGsスクール!」


LIXIL SDGsアンバサダーの内田篤人さんと一緒に、SDGsというテーマを分かりやすく学び、 楽しい実験や体験を通じて、皆さんと一緒に知識を身につけていただくYouTube番組です。

≪お話をうかがった方≫

矢野きくのさん

家事アドバイザー。家事の効率化、家庭でできるSDGsを専門にテレビ・ラジオ・講演・コラム連載などで活動。時短家事、便利グッズ、業務用品の情報にも精通し、大手メーカーの生活用品の企画にも携わる。著書『シンプルライフの節約リスト』『私らしくシンプル家事 時間とお金を呼び込む節約大ワザ、小ワザ』、監修書『50代からの 自宅の片づけ 実家の片づけ』など。

文◎山下久猛
写真提供◎photoAC/Shutterstock/PIXTA

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