
風邪の原因となるウイルスが気になる季節がやってきました。そんな季節に取り入れたいのが魚料理。青魚やサーモンには抗ウイルス作用がある「オメガ3系脂肪酸」がたっぷり含まれています。そこで今回は、日本人になじみ深くて子どもにも人気のサーモン(鮭)と旬のサンマを使った、見た目も楽しいレシピを管理栄養士の美才治真澄さんに教えていただきました。
鮭は日本人が大好きな魚。魚独特のにおいや小骨が少ないため、子どもから高齢者まで不動の人気を保っています。通年で手に入りやすいため、食卓には、焼き鮭やムニエル、お刺身などさまざまな鮭料理が登場しているのではないでしょうか。
鮭にはもちろん、抗ウイルス作用があるとされるオメガ3系脂肪酸(DHA・EPA)が豊富に含まれていますが、鮭のパワーはそれだけではありません。第1回でご紹介したように、ほかの魚にはそれほど含まれていない「ビタミンD」が群を抜いて含まれているのです。
さらに鮭の赤い色は、ニンジンのβカロテンと同じカロテノイドの一種「アスタキチンサン」という天然色素で、これにも強い抗酸化成分が含まれています。
これからの季節に登場する秋鮭も魅力的ですが、今回は免疫力アップをより効果的にするため、お刺身用のサーモンに、同じオメガ3系脂肪酸の「シソ油」を加えたレシピを紹介します。
2品目は日本の秋の食卓には欠かせないサンマを使います。定番のサンマの塩焼きに秋らしいアレンジを加えて、見た目も華やかに、食べると口の中に秋の味がふんわり広がるような主菜に仕上げました。
まずは切って混ぜるだけのとっても簡単な前菜です。サーモンとアボカドを使い、見た目も鮮やかな一皿に仕上げました。オメガ3系脂肪酸を効率よく摂取するには、生食が一番なのです。
サーモンは刺身用のブロックでも、カットされているものでももちろんOK。アボカドと同じ大きさにカットすると、見た目がそろっていてきれいですし、口に入れたときも違和感がなくなります。
アボカドはビタミンEや食物繊維が豊富。肌や血管の老化の原因となる活性酸素の働きを抑えてくれる働きがあります。「森のバター」といわれるほど脂質の多いアボカドですが、この脂質のほとんどは不飽和脂肪酸。なかでもオリーブオイルと同じオレイン酸(オメガ9系脂肪酸)が多く含まれています。オレイン酸は善玉コレステロールを減らさずに悪玉コレステロールを減らしてくれる働きがあるので、コレステロール値が気になる場合は、意識して食べるといいでしょう。
サーモンとアボカドの和え物は、風味のあるオリーブオイルを使いたくなりますが、ここでは栄養重視で「シソ油」を使いました。シソ油は「エゴマ油」ともいわれています。この油はオメガ3系脂肪酸が多く含まれる油の代表格。ちなみに亜麻仁油やグリーンナッツオイルもオメガ3系脂肪酸が豊富です。
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サンマのグリルといえば付け合わせは大根おろしが定番ですが、ここでは旬のリンゴとイチジクをソース風に付け合わせました。
「1日1個のリンゴは医者いらず」といわれるほど栄養価が高いリンゴ。ビタミン、カリウム、ペクチンなどを含み、コレステロール値の上昇を抑えたり、便秘を解消したりといったことが期待できます。甘みは果糖やブドウ糖などで、体内でエネルギーとなり、酸味は疲労回復を促してくれます。
夏の終わりから秋が旬のイチジクも、さまざまな栄養素があります。水溶性食物繊維のペクチンが豊富で、腸の活動を活発にさせ、便秘の解消に効果があるほか、高血圧などの予防に役立つカリウム、疲労回復作用が期待できるクエン酸も多く含んでいます。多様な効能が期待できるため、江戸時代に渡来したときは薬用として栽培されていたそうです。
これら2つの旬の果物を、皮ごと使ってソースにするのがこのレシピのポイントです。果物の有効成分は皮やその近くにあるので、皮ごと使うことであますことなく栄養が摂れます。リンゴの皮の赤色は、ポリフェノールの一つアントシアニンで、抗酸化作用があります。イチジクの皮は食物繊維が豊富。腸内環境を整えてくれ、免疫力アップが期待できます。
魚をグリルで焼くときは、グリル内の網をよく熱して油を塗るか、グリル用ホイールを使います。フライパンで焼く場合は、サンマを半分にカットして(この場合は内臓を取り除きます)魚焼きシートを使うといいでしょう。
サンマのほろ苦いハラワタも、甘酸っぱいソースと一緒に食べるとおいしさ倍増! おろしたリンゴのシャキシャキ感とイチジクのとろりとした食感とともに、秋の味覚が口の中に広がる楽しい一皿です。
<リンゴおろし>
管理栄養士、フードコーディネーター、女子栄養大学生涯学習講師。香川栄養専門学校(女子栄養大学短期大学部)卒業後、(株)ダイエットコミュニケーションズにて荒牧麻子氏に師事。企業、メディアに向けたメニュー提案や栄養相談、料理教室、オーダーメイドケータリングなどを中心に活動を行っている。
撮影◎粟井信行(昭和基地 ¥50)
スタイリング◎時吉真由美(cooking Clocca)
文◎江頭紀子