
肉料理シリーズの最後は、牛肉と羊肉を使ったスタミナアップレシピを管理栄養士の美才治真澄さんに教えていただきました。牛肉も羊肉も独特のにおいがあるので、苦手意識を持つ人もいるかもしれません。ですが、今回ご紹介するレシピは、肉のにおいはほとんど感じず、むしろ口の中に広がるのは、エスニックな風味とおいしさ。コロナ禍で海外に行けない中、せめて自宅で異国を感じたいという方には、絶賛おすすめのレシピです。
牛肉と羊肉は、豚肉や鶏肉に比べて現代人に不足しがちな鉄や亜鉛が豊富なのが特徴です。特に赤身部分にたくさん含まれています。
鉄は、血液の中にあるヘモグロビンをつくる重要な成分の一つ。ヘモグロビンは酸素とくっついて、酸素を全身に運ぶ役割があります。そのため鉄が不足すると全身に酸素が行き渡らず、体が酸欠状態になってしまいます。そうなるとエネルギー不足を起こし、疲れやすくなってしまうのです。脳へ酸素が行き渡らないと、思考力や記憶力も衰えてしまうので、しっかり摂っておきたいですね。
亜鉛は免疫機能を高め、体内に侵入してくる細菌やウイルスを撃退する働きがあり、感染症対策にも活かせるのではと近年注目の栄養素です。
不足すると、免疫力の低下を招くほか、皮膚炎や食欲不振、発育障害、脱毛などさまざまな機能障害を引き起こします。
亜鉛はクエン酸やビタミンC、動物性タンパク質とともに摂ると効率よく吸収されます。逆にお酒を飲むと消費されやすいので、料理と一緒にお酒を飲むなら、お酒はほどよくたしなむ程度がいいかもしれません。
タイ料理は辛いだけでなく、酸味や甘みなどが加わって、なんともいえない独特のおいしさが特徴ですが、まさにそれを再現した料理がこのタイ風ビーフサラダです。
野菜はそれぞれカットして混ぜ合わせておき、そこに焼いてそぎ切りにしたステーキ肉を入れてドレッシングで混ぜればできあがり。それほど手間はかかりませんし、少量の牛肉でも、数種類の野菜と合わせれば、見た目が豪華でボリューミーな一品に仕上がります。
牛肉は、今回は赤身のステーキ肉を使いましたが、薄切りのもも肉でもOK。サシ(脂)の多い和牛ではなく赤身のオージービーフなどがおすすめです。
ドレッシングに使うニンニクはみじん切りにすることがポイント。すりおろしてしまうと辛みが強くなってしまいます。また、チューブを使うと、免疫細胞を活性化してくれるアリシンの効果が薄れてしまうので、ここは一手間かけて生のニンニクを使ってみてください。
鷹の爪で辛さを、ライム果汁で酸味を、そして甘みは黒砂糖でつけます。本場タイではパームシュガーを使い、黒砂糖はその風味により近いのです。黒砂糖がなければ、きび糖や三温糖などでも大丈夫。
ステーキ肉の焼き加減はお好みで。牛肉なので、レア(中が赤い状態)でも表面と側面をしっかり焼いていれば基本的に問題はありません。ただ、加工されたステーキ肉は、食中毒菌防止のため、中までしっかり焼いたほうがいいでしょう。
焼いた後、まな板に移し5分ほど休ませます。すぐに切ると肉汁が出てしまうからです。しばらくおいて肉汁のうま味を閉じ込めてからそぎ切りにしましょう。切った肉と野菜を合わせ、ドレッシングを回しかけて、タイに思いを馳せながら召し上がってください。
≪A≫
2品目はラム肉を使った夏にぴったりのエスニック料理です。
ラム肉はなじみのない方も多いかもしれませんが、最近は一般的なスーパーでも手に入ります。ニュージーランド産やオーストラリア産がほとんどで、ラムチョップ、タレ付きのジンギスカン用、厚切り肉、薄切り肉など複数の種類があるスーパーもあります。
気になるお値段は、だいたい100g200円代。300円近くするものもありますが、牛肉よりお手頃です。鉄分や亜鉛などのミネラルが豊富なので、ぜひ肉料理のレパートリーに入れてみてください。
今回使ったのは薄切り肉です。牛肉とは異なり、ラム肉の場合は赤身肉を販売しているところは少ないので、目立つ脂があれば脂肪分を抑えるため、カットして取り除きましょう
最近売られているラム肉は、においはあまり強くありませんが、においを和らげるため、クミンシードやチリパウダーなどの香辛料を使います。
ここで「赤紫蘇ふりかけ」、いわゆる「ゆかり」を加えます。というのは、より現地の味に近づけるため。トルコ料理では「スマック」という酸味のあるスパイスを使うことが多く、「ゆかり」はそのスマックに、味も見た目もそっくりなんです。イスケンデルケバブも、現地ではスマックが加えられているので、ゆかりを使うことにしました。
ピタパンを焼いたのと同じフライパンで、漬け込んだラム肉を焼き色がつくまで焼いたら、トマトを加えて汁気がなくなるまで強火で炒めます。トマトはラム肉と相性が良く、においを和らげる役割もあります。煮詰めるように炒めると、味が凝縮してよりおいしくなります。
≪A≫
≪ヨーグルトソース≫
管理栄養士、フードコーディネーター、女子栄養大学生涯学習講師。香川栄養専門学校(女子栄養大学短期大学部)卒業後、(株)ダイエットコミュニケーションズにて荒牧麻子氏に師事。企業、メディアに向けたメニュー提案や栄養相談、料理教室、オーダーメイドケータリングなどを中心に活動を行っている。
撮影◎粟井信行(昭和基地 ¥50)
スタイリング◎藤井玲子(cooking Clocca)
文◎江頭紀子