おうちで楽しむワンランク上のバーベキュー![第4回]

雨でもOK、「伊勢コンロ」でお部屋BBQ!

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二重構造でテーブルの上に置いても安心

 伊勢コンロは三重県伊勢地方の萬古焼(ばんこやき)の産地で多く作られていることから、そう呼ばれているようです。萬古焼は陶器と磁器の中間のような焼きもので、「半磁器」に分類されています。耐熱性に優れ、代表的な製品は土鍋。つまり、直火に強い焼きものだといえます。
 水コンロという呼び名もあり、これは仕組みとして水を使うことからついた呼び名です。

 二重構造になっており、内側の火皿を外し、水を入れて使用します。その上に、内側の火皿をセットし、中に炭を入れます。コンロの下には付属の杉板を敷き、コンロが熱くなりすぎてテーブルなどが焦げるのを防ぎます。
 この火皿じたいを直火にかけることもできますが、火皿が熱くなり、テーブルまで運ぶのが大変です。

 そこで、連載の第1回目でご紹介した火おこし器で炭をおこすといいでしょう。

 今回は、着火には時間がかかりますが、火力が強く、火持ちもいい備長炭を使いました。細長く、太さがある程度揃っているので、こうしたコンロを使うときに炭を並べやすいのです。高級な焼鳥店などが使うことでもよく知られていますね。

 伊勢コンロには焼き網も付属していますから、それをセットすればBBQの準備は完了です。

 火皿から火の付いた炭くずが落ちても、水の上なので心配はありません。
 ただし、水分や脂が多いホルモンなどを焼くと煙が出やすく、部屋の中が煙で充満します。火災報知器が反応することもあるので、注意が必要です。

 また、現代の室内は密閉性が高いので、換気には特に注意しましょう。キッチンの換気扇を回し、窓から新鮮な空気が入るようにすれば一酸化炭素中毒などの心配もありません。

 終わった後の炭の処理は、連載第1回でお伝えしたことと同じ。火消し壺などに炭を入れ、きちんと処理しましょう。

 炭がおきて火力が安定する間に、BBQの準備をしましょう!

竹串を使って一口サイズに

 室内BBQではお肉も良いですが、塊の肉を豪快に焼くというよりは、一口サイズの食材をさっと焼いて熱々をいただくスタイルのほうが合います。BBQグリルのように大量の炭を使うことはできませんし、大きな肉が焼けるのを待たずとも済むからです。

 海鮮を中心として、野菜などを一口サイズに切り、串に刺して食卓に並べ、自分が食べたいものを自分で焼いて楽しむ形にしてみましょう。豪快なBBQとはまた違った楽しさが味わえます。お子さんも調理に参加しやすいですよ。

 おすすめのメニューは以下のとおりです。

芝エビ

 一番のおすすめは芝エビです。唐揚げにしたり、すり身にしたり、高級天ぷら店のかき揚げなどで使われる長さ10cmほどの小さなエビです。旬は春先までですが、いまでは冷凍ものなら1年中楽しめます。クルマエビや、お手頃なブラックタイガー、バナメイエビなども悪くありませんが、小さいがゆえに、頭から尻尾まで全部食べるのが芝エビのいいところ。

 芝エビは、尻尾のほうから竹串を刺します。一口か二口で食べられますし、とても美味しいので、一人で10尾、20尾と食べてしまいます。

 冷凍物なら1kg(1000円前後)とお手頃で、70〜100尾くらいあります。魚屋さんに注文すると仕入れてくれるでしょう。もちろん、新鮮な生の芝エビが手に入れば最高です。

 焼いている途中で、酒と醤油を1対1で割った「酒醤油」を刷毛で二度ほど塗ります。醤油や炭であぶられる香ばしさがたまりません。酒醤油は万能調味料で、BBQの基本の味付けとしてたっぷり用意しましょう。

葉付きショウガ豚バラ巻き

 夏に出まわる葉付きのショウガ。醤油や味噌に漬け込んで、生でいただくことが多いと思いますが、実は焼いても美味しいのです。豚バラのスライスを巻き付けましょう。竹串に長さを合わせて葉を切り、串を刺さずに並べます。
 これも、焼きながら酒醤油を塗ると美味しくいただけます。
 塩胡椒や、酒で溶いた味噌を塗ってもいいでしょう。

グリーンアスパラ

 夏野菜のグリーンアスパラも、炭火焼きで美味しい食材の一つ。根元の方の硬い皮をピーラーなどで剥いてから半分に切り、串に刺します。焼けたらエクストラバージンオリーブオイルに浸けてから、ぱらりと塩を振って食べてもいいでしょう。

ズッキーニ

 厚さ1cmほどの輪切りにして串に刺します。これもグリーンアスパラ同様の食べ方が向いています。

プチトマト豚バラ巻き

 プチトマトを豚バラのスライスで巻いて串に刺します。刺す前に両手でお団子を丸めるようにすると、きれいに丸くなります。

ししゃも(カペリン)

 普段は魚焼きグリルで焼くししゃもも、炭で焼くと美味しさがワンランクアップします。芝エビと同じように、お尻のところから串に刺しましょう。

鰺の干物

 お部屋BBQの裏の主役といっていいのは干物です。最近、「食べるのが面倒」と消費量が減っている鰺の干物ですが、頭と尻尾を落とし、背中のところで縦に切ってから一口大に切り分け、串を刺します。炭火で焼くと、皮と身の間の脂で皮がサクサク、遠赤外線の力で中はふんわり焼くことができるのです。

 このほかにも、冷蔵庫の中にあるはんぺんやかまぼこ、さつま揚げなどの練り物も、一口大にして串に刺すことで、お部屋BBQに最高の食材になります。
 椎茸やマッシュルームなどのキノコ類もおすすめです。

さあ、あとは焼くだけです!

 串に刺した具材を器に盛って食卓に出せば、家族でも、お客様でも、気分がアガること請け合いです。自分の食べたいものをそれぞれ焼くことで、その場を仕切るBBQ奉行に気分を害されることもありません!

 調味料は、前述の酒醤油のほか、塩、胡椒、エクストラバージンオリーブオイルに加え、レモン、柚子胡椒、コチュジャン、酒や水で溶いた味噌、七味など、さまざまなものを用意して食べ比べてもいいでしょう。

 ビールはもちろん、どんなお酒にも合います。お子さんが寝た後に、キンと冷えた日本酒をちびちび飲みながら夫婦で語らう時間を過ごす、なんていうのも素敵です。


文・レシピ開発◎坂井淳一(酒ごはん研究所)
撮影◎大西尚明

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