いろいろ誤解がある「日本のパエリア」
パエリアは、スペイン・バレンシア地方の郷土料理ですが、いまやスペイン全土で人気の米料理です。日本ではパエリアと呼んでいますが、現地では「パエージャ」と発音することが多いようです。もともとは平たい鉄の鍋のことを指す言葉で、それがそのまま料理名になりました。
ルーツは、「カスエラ」と呼ぶ陶器製の土鍋のようなもので作る炊き込みごはん。家庭で作るなら、フライパンを使ってもまったく問題ありません。
このパエリア、日本では「パエリア奉行」のような人がいろいろウンチクを語りますが、実際スペインでは「そんなことしないよ」ということも少なくありません。
例えば日本では、「パエリアには高級食材のサフランが欠かせない」という人がいます。これは高級レストランでの話で、家庭ではほとんど使いません。
「米の芯が残ったアルデンテの状態が最高」という話も、本場バレンシアでは「それは出来損ない」と言われます。
日本のレシピでよく見られる「固形コンソメのスープを加える」というものも、滅多にありません。お肉のパエリアはスープストックを使ったりしますが、シーフードのパエリアなら素材から出る旨みだけで、十分美味しく作れます。
美味しいパエリアの基本はアサリの旨み
おうちBBQで作るごちそうパエリアは、スープを取ったりしなくても美味しくできるシーフードがおすすめ。
主な材料はアサリ、イカ、それに有頭のエビも入れて豪華に仕上げます。食材を並べただけで、美味しい出汁が出ることは想像できますよね!
今回は、大きなイカではなく、日本の初夏〜夏に出回る「ホタルイカ」を使います。冷凍のボイルでいいでしょう。
ポイントはアサリ。フランス料理などでは、アサリの出汁(ジュ)で料理の美味しさを増します。貝から出るスープが、このレシピの基本だと思ってください。
シーフードパエリア
【材料 4人分】
直径約27cmのパエリアパン1枚分
- 米……2カップ ※洗いません
- トマト……大1個 ※ざく切りにする(トマト水煮缶なら1/2缶)
- 水……800ml
- 白ワイン……100cc程度
- アサリ……1カップ ※砂出しをした後、注水で殻をこすり合わせて洗う
- 有頭エビ(パナメイエビやブラックタイガー)……4〜8本 ※背わたを取る
- ホタルイカ……1カップ ※目やくちばしが気になる場合は取る
- タマネギ……中1個 ※みじん切り
- にんにく……3片 ※みじん切り
- カラーピーマン……1個 ※みじん切り
- パプリカ(赤か黄)……1個(飾り用)※上下を落として、拍子木切りにする
- プチトマト(飾り用)……5〜8個
- パセリ(飾り用)……適量
- エクストラバージンオリーブオイル……大さじ4
- 塩……適宜
- レモン……1個
材料を炒めてから白ワインで旨みを出す
炭火の上にパエリアパンを置き、たっぷりのエクストラバージンオリーブオイルを入れます。レシピでは目安として大さじ4と書いていますが、スペイン人はさらにたっぷり使います。オリーブオイルは「油」ではなく「調味料」なのです。
あまり熱くならないところで、ニンニク、タマネギ、みじん切りにしたピーマンを入れて炒めます。ピーマンはどんな色でもかまいません。飾り用に使うパプリカの端も、みじん切りにして入れてしまいましょう。
エビ、アサリ、ホタルイカを加え、さらに炒めます。ホタルイカの代わりに大きなイカの輪切りや脚を使ってもかまいません。
ある程度炒めたところで白ワインを加えます。およそ100cc。目分量でかまいません。
ワインのボトルは750ccが基本ですから、1/7〜1/8くらいです。
しばらくするとアサリの口が開き、エビにも火が入ってきます。そのタイミングでエビ、アサリ、ホタルイカを、一度ボウルなどに移しましょう。火が入りすぎると身が縮んでしまうのです。
キレイに取るのは大変ですから、少しくらい残ってしまってもそれはご愛敬。いいスープを出すために役立ってもらいましょう。
米を入れたら、あまりかき混ぜない
アサリなどをだいたい取り終えた鍋に水を加えます。今回は米2カップですから、水は800ccくらいでいいでしょう。炭の火が強いと蒸発が早いので、1000ccくらいでもいいかもしれません。
水が多いと、そのぶん少し柔らかく仕上がります。塩とトマトもこのタイミングで入れましょう。
塩は2つまみ程度。味が足りなければ食べるときに加えれば良いので、あまりここで入れすぎずに。
お米を洗わずに投入します。この日使ったのは長野県産の「風さやか」というお米です。日本在住のスペイン人の料理人が何人も「スペインのお米よりこの品種のほうが美味しい」と、お墨付きを与えたお米です。普通に炊いても美味しく、値段も手頃なのでおすすめです。
もちろん、普段使っているお米でもかまいません。
米を入れたら、平らにならしてスープから顔を出さないようにします。ここから先は、あまりかき混ぜないようにしましょう。かき混ぜると米から粘りが出てしまい、仕上がりが「ぱらり」となりにくいのです。このあたりが、日本の白ごはんと違うところです。
炭火は火のばらつきがあります。最初は強いところでかまいませんが、沸騰して水分が飛びはじめたときに、あまり強いと焦げが強くなってしまいます。火を見ながら、弱めのところに場所を変えていきましょう。
移動させるときは、乾いたタオルや鍋つかみなどを使いましょう。濡れた布でつかむと火傷をします。
水分が飛びはじめたら具を再び乗せましょう!
鍋の中の水分が飛び、お米の姿が見えはじめたら、米を味見してみましょう。少し芯が残るくらいに火が入っていたら、取り置きしておいた具材を並べます。エビを放射状に並べ、その隙間をアサリやホタルイカで埋めていくのが定番のスタイル。もちろん、どんな並べ方でも楽しいので、お子さんにアーティスティックな才能を発揮してもらうのもいいでしょう。鍋のつかみ手や炭回りは特に熱いので、注意を払ってあげましょう。
水分の飛び具合を見て、アルミホイルで蓋を作って乗せます。鍋から上がる蒸気で具を熱くすることと、表面が乾きすぎないようにするためです。水分が多い段階で乗せると、仕上がりがべちゃっとなります。
パエリアのできの善し悪しは、鍋底のお焦げでわかります。ほど良いお焦げができるのが、美味しいパエリア。お焦げができはじめると、香ばしい香りがしてくるので、その段階でできあがりと判断して良いでしょう。プチトマトやパプリカ、パセリなどを散らしてできあがりです!
レモンを搾っていただきましょう。パエリアを作るときに開けたワインを片手に、さあパーティのはじまりです!
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