国の風土が豆の味を決める!
産地や品種の理解を深めるために、まずはコーヒー豆作りのプロセスについて説明します。
コーヒーの木に実る赤い果実“コーヒーチェリー”から「種子」を取り出し、「種子」を自然乾燥法や水洗処理法で精選すると、淡い黄緑色をした「生豆」に仕上がります。それを焙煎すると焦げ茶色の「コーヒー豆」ができ上がるのです。
コーヒーは産地によって、ブランド名が付けられます。よく耳にする「キリマンジャロ」「ブルーマウンテン」などの銘柄は、土地の名前を指しているのです。
ちなみに、さまざまな地域の豆を混ぜたコーヒーを「ブレンド」といいます。
代表的な生産エリアは、アフリカ、南米、中米の3つ。
アフリカ大陸の農園で育てられたコーヒーの特徴について、木原さんはこう解説します。
「コーヒー栽培に最適な気候や標高の高さを誇ります。全体的な味の傾向としてフルーティな酸味を楽しめるものが多いです。『キリマンジャロ』の産地であるタンザニアもアフリカに位置します」
続いて、「南米は『ブラジル』『コロンビア』などで知られます。ブラジルは標高が低く、そこで育ったコーヒー豆は穏やかな味わいが特徴です。他方で、ウユニ塩湖が観光名所のボリビアは標高が高いため、味と香りが濃厚なコーヒー豆が生まれます。同じエリアでも標高や気候が違うと、コーヒーにその土地の個性が宿るんですよ」と、指摘。
中米については、こう話します。
「『ブルーマウンテン』『グアテマラ』などの生産地として有名ですね。どの国の豆もバランスが取れていて、王道な味わいです。特にグアテマラ共和国の気候は、寒暖差のバランスがコーヒー作りにとても適しています。夜は寒く、昼は温かい環境で育つコーヒーチェリーは、甘く実るんです。そうすると甘い香りのするコーヒーになります」
木原さんおすすめの銘柄は?
紹介した以外にも、たくさんの国や地域でコーヒーが栽培されています。ただ「どれを選べばよいのかわからない」という方に、飲みやすい銘柄を教えていただきました。
「アフリカ大陸生まれの『エチオピア』『ルワンダ』が2大推しです」と、木原さん。
「『エチオピア』はフローラルで紅茶のような香りを堪能できます。このような風味がしっかり出ているコーヒーは、『良いエチオピア』という証拠です。生産量が多く高品質なコーヒーとして知られ、プロからの人気も高いブランドですね。
さらにコーヒー発祥の地といわれていて、コーヒーの木の原木といわれる『マザーツリー(母なる樹)』があり、樹齢約200年となる今もなお、コーヒーの実をつけているそうです。国のGDPの多くを占めるのがコーヒー関連産業で、コーヒー大国といえます」
「マイナーなところだと、ルワンダ産がおすすめですよ。各国の銘柄によって舌触りが違うのですが、『ルワンダ』は口に含んだときの質感がなめらかです。酸味は『ケニア』に似てフレッシュな印象でありつつ、『ケニア』ほどのクセはありません。ルワンダは産地としては発展途上で、新しい農園が発掘されている段階です」
木の種類によっても風味が変わる
左から「コロンビア」「エチオピア」「グアテマラ・ペニャロハ」の生豆
コーヒーの種類は産地の違いに加え、コーヒーの木の品種によってさらに細分化されます。同じ土地で作っても、木の品種によって生豆の色や形が違い、焙煎した後の味わいも異なります。
商業用に栽培されているのは主に「アラビカ種」「ロブスタ種(カネフォラ種)」です。この原種を元に品種改良され、いまは40以上もの種類があります。
一般的なレギュラーコーヒーとして最も流通している「アラビカ種」のバリエーションについて、代表的かつおすすめなものを紹介いただきました。
「人気な品種は『ゲイシャ』ですね。名前の由来は、発祥地がエチオピアのゲイシャという村だからです。中米パナマを中心に、多く土地で栽培されるようになり有名になりました。
コーヒーの風味はフローラルで、ベルガモットやジャスミン、紅茶の香りが漂います。高貴な味わいで、値段も高めです」
続けて「値段が手頃で、個人的に好きなのが『ティピカ』です。味はゲイシャと似ていて、フルーティで華やかな香りを楽しめますよ。
『ティピカ』と並び、アラビカ優良品種である『ブルボン』はマイルドな舌触りが特徴で、芳醇で甘みがあり飲みやすいです」と、話します。
後半では、焙煎について詳しく解説します。
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