おうちで本格コーヒーを楽しもう[1]前編

これだけあれば大丈夫! 必要な道具を徹底解説

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ライフスタイルレシピ季節

講師は日本のコーヒーシーンを
牽引するホープ

 教えてもらうのは、業界で注目を集めているバリスタ・ロースターの木原武蔵さんです。用賀や渋谷など都内に4店舗を構える、スペシャリティコーヒー専門店「WOODBERRY COFFEE ROASTERS」の経営者でもあります。

 今回は2020年12月にオープンした荻窪店にお邪魔して、お話をうかがってきました。

 吹き抜けのガラス張りの外観が目を引く店舗は、木を基調にしたナチュラルな空間。カウンターには世界各国のコーヒー豆がずらりと並び、奥には“ロースタリー(コーヒー豆の焙煎所)”が。2階にあがるとカフェスペースになっており、観葉植物とテーブル・チェアがセンスよく配置されています。3階は週末のみコーヒーバーとして開放。屋上はテラス席になっており、青空のもとコーヒーを楽しめます。

 木原さんの、「コーヒーを片手に、ゆっくりくつろいでほしい」という思いが伝わってくる店舗でした。
 そんな、ドリップコーヒーだけでなく癒しの時間と空間作りの達人でもある木原さんに、まずは家庭で取り入れやすい器具の知識についてうかがっていきましょう。

何を揃えればよい?

 それでは、ハンドドリップに欠かせない道具と材料について教えていただきます。

【道具・材料リスト】

  • ・コーヒー豆またはコーヒー粉
  • ・コーヒーミル(コーヒー豆を使う場合)
  • ・ドリッパー
  • ・サーバー(マグカップで代用可)
  • ・ケトル
  • ・ペーパーフィルター
  • ・測り(クッキングスケール)
  • ・スプーン(ドリップするときに使用)

 まず揃えたいのは、コーヒー豆またはコーヒー粉です。「豆を自分で挽くか」「粉タイプを買うか」は、迷うポイントですよね。
 木原さんは「専門店にはたいてい高性能なミルが置いてあり、店員さんに頼めば購入した豆を挽いてくれるので、1週間ほどで飲み切るならお店で挽いてもらった方がおすすめです」と、アドバイスします。

荻窪店のコーヒーミル。

 豆を買った場合、ベストな状態で飲める期間は1か月ほどだそう。
「豆を焙煎してから最初の一週間は味が落ち着いていないので、早く飲めばいいというわけではありません。ワインのように、コーヒーも熟成させるとおいしくなります。
 熟成度合いの好みは人それぞれですが、個人的には2週間エイジングさせたものが好きですね。香りが出てきて、華やかな風味を味わえます」

 豆の状態で買えば、自分にとって最適なエイジングのタイミングを探りながら飲み進める、という楽しみが加わります。
 焙煎度や品種によっても味わいや風味が異なるコーヒー豆。その選び方については、来月配信予定の「第2回」で紹介します。

 喫茶店で堪能するような、挽きたてコーヒーを自宅で作りたい方には、コーヒーミルが必須。
「価格帯は300円程度から50万円までさまざまです。値段と精度は比例していて、高価格のミルで豆を挽くと粒ぞろいがよく、お湯をかけたときに均一に抽出できるのでおいしく仕上がるんです。さらに、よく切れる刃を使っているので、豆の断面がきれいに切り刻まれ、お湯をかけたときにコーヒーのうまみが染み出やすくなります」

 ここで、初心者でも気軽に買えるミルについてアドバイスいただきました。
「プロに引けを取らない味を家庭で再現したい方は3万円以上のものを買えば、専門店レベルの性能が期待できると思います。でも最近は3千円ほどで十分おいしく挽けるミルもあるので、そこから初めてみるのもOKです」

 さらに、刃のタイプに注目するのがポイントだそう。
「ミルの種類は刃のタイプで分けられ、『カッティング式』と、フードプロセッサーと同じ構造の『プロペラ式』の2つになります。
 理想の粉の挽き目は、粒度が揃って微粉がない状態です。『プロペラ式』で挽くと、粉の大きさが不揃いになりがちで、微粉が出やすいデメリットがあるので、『カッティング式』をおすすめします」

残りの器具も、詳しく解説!

 ドリッパーは陶器、ガラス、金属、プラスチックなどがありますが、木原さんのおすすめは「ガラス製」。その理由についてこう解説します。
「ドリッパーを予め温めておき、温度を一定の高さに保つことがおいしく淹れるコツです。そうすると総合的に、熱しやすく冷めにくいガラスが使いやすいと思います。
 陶器もいいのですが、湯通ししても温まりにくいのがネック。金属はすぐ温まるけど、すぐ冷めてしまいます。プラスチックは、温度は安定していますが、環境の面で強くはおすすめできません」

「サーバーは、それで味が左右されることはないので家庭にあるもので大丈夫ですよ。マグカップに直接ドリッパーをセットしてもよいです」
 一人分なら、マグカップを使えばサーバーを洗う手間もなく、ハンドドリップへのハードルが下がりますね。

 ケトルは注ぎ口が尖ったタイプがよいというイメージもありますが、そうとも限らないそうです。
「ケトルもこだわらなくて大丈夫です。ちなみに、最近業界では、細く注ぐより、太く注ぐのが潮流となっています。注ぎ口の太さで味が異なり、細口で注ぐと濃厚に、太口で注ぐとさっぱりとした味わいになりますよ」

 コーヒーフィルターには、フランネル(布)製の「ネルフィルター」や「金属フィルター」がありますが、今回は普及している「ペーパーフィルター」を使います。

「 ペーパーフィルターは、“白色の漂白タイプ”と、クラフト紙のような“茶色の未漂白タイプ”があります。それぞれ湯通ししお湯だけを飲み比べると、“茶色の未漂白タイプ”を通過した方は若干、紙の匂いがします。コーヒーになったときにはあまりわからないかもしれませんが、どちらかで迷っているなら“漂白タイプ”をおすすめしています」

 測りとスプーンは家にあるもので問題ありません。使うタイミングについては、淹れ方を紹介する中編でお伝えします。

≪お話を伺った方≫

木原武蔵さん

業界で注目を集めている若手バリスタ・ロースターの逸材。現在東京に4店舗構える「WOODBERRY COFFEE ROASTERS」を経営している。店ではコーヒー豆・器具の販売とともに、コーヒー・オーガニックスイーツのテイクアウトも行う。カフェスペースもあり、幅広い層に支持されている人気店だ。

文◎井口理恵 写真◎平野晋子

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