炊飯の極意を知って、極上の炊きたてごはんを!「新米をガスで炊いてみませんか?」 第3回

どんなお鍋を使いましょうか?

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大は小を兼ねません

 通販サイトや調理器具店を見てみると、炊飯専用の鍋はいろいろなサイズ、いろいろなタイプのものがあります。価格も様々。いったいどれを選んだら良いのか迷います。

 炊飯鍋を選ぶ時に、最初に考えるべきは「大きさ」です。

 普段炊いているごはんの量に合わせて、最適なものを選びましょう。鍋の容量の50~70パーセントの量を炊くのが理想で、鍋がそれより大きいとうまく対流しなかったり、焦げやすくなります。小さすぎてもきれいな対流が起きず、煮る、蒸す、焼くの三つの「複合加熱」をバランス良く行えなくなります。

鍋底の形状・素材は熱源のタイプに合わせて

 炊飯鍋を見ていると、様々な形があります。大きく分けて、底が平たいものと丸いものです。この二つには少し違いがあります。平底のものは、下から当たる熱が底全体に強く当たり、そこからサイドに熱が回っていきます。丸いものは底だけではなく、サイドにもうまく火が回ります。昔の羽釜に近い形です。

 コンロの熱源がガスなら、丸い底の方が炊きやすいといえます。IHの場合、どちらかというと平たい底のものがいいでしょう。もちろん、丸底のものでもIHに対応していれば使えます。

 そして、素材。ガスが熱源ならば、どんな素材のものでも美味しく炊けますが、IHの場合、土鍋は使えませんので注意が必要です。ただし、最近はIH対応の加工がされた土鍋もあります。IHで土鍋を使いたい、という人はそれを選びましょう。

 ここからは、タイプ別の炊飯鍋の特徴をご紹介します。

1:文化鍋タイプ

直火炊飯の入門にぴったり

「文化鍋」または「文化釜」という炊飯用の鍋があります。これは1950年にとある軽金属造メーカーが発売したものにルーツを持ちます。アルミ合金製で軽く、当時人気があったガスレンジとともに一家にひとつ買われました。電気炊飯器の普及とともにあまり使われなくなりましたが、現代でも根強いファンがいます。

 写真のリンナイの炊飯鍋は、その文化鍋の良さを残しつつ、現代的な使いやすさを備えたものです。文化鍋の最大の利点は、やや深い位置に蓋が乗り、炊飯時の吹きこぼれを抑えてくれるところにあります。その長所は残しつつ、内側はコーティングがなされ、もし失敗して焦げてもこびりつきにくくなっています。水分量の目盛りも付いています。また、蓋がガラス製なので、中がよく見えるのも使い勝手が良い理由です。

 このタイプの鍋は、炊飯だけではなく、煮物や麺類を茹でるなど、様々な使い方が出来ます。また、価格も比較的安価で、リンナイのこの製品ならば、3合炊き(RTR-300D1)で市場価格3000円前後、5合炊き(RTR-500D)で4000円前後。
 まず直火炊飯をしてみたいと思うのなら、この鍋から始めるのも良いのではないでしょうか。

2:鍋物用の土鍋

炊き込みごはんなどに

 家庭にもある鍋物用の土鍋。直火炊飯というと、このタイプを思い出す方も多いでしょう。しかし、こうした土鍋は口径が広く、深さがないので、実はあまり炊飯には向いていません。沸騰した後の対流がうまく起きないのです。けれど、例えば焼いた干物や鯛などを入れた「土鍋炊き込みごはん」ならば、大きな魚がどん、と入るこのタイプも悪くありません。

3:炊飯専用土鍋

柔らかい熱できれいに炊ける

 土鍋には、炊飯用と表示されたものがたくさんあります。お手軽な2000円程度のものから、作家ものや有名窯の風格ある高級なものまで値段も様々です。大きく分けて、底が丸いタイプと平たいタイプに分かれます。丸いものは比較的厚手で重く、蓋も丸くて重いものが多く、蒸気が上に立ち上がることでキレイに炊けます。ガスの火がサイドにまでうまく回るのも使い勝手の良さに繋がります。

 底が平たいものは、丸いものに比べ、全体に薄手の造りになっています。その分軽いのが特徴です。軽さは取り回しの良さに繋がります。使い終わった後に洗うのも楽です。

 写真の土鍋は3合炊きで市価3000円くらいのもの。筆者がもう10年使っているものです。中蓋が付いていて、二重の蓋になることで軽い蓋でも重い蓋と同様の炊きあがりを目指すことが出来ます。

 平たい底は少し慣れが必要で、底全体に強い火が当たるので、少し焦げやすいという欠点がありますが、土鍋自体は一度熱を帯びてしまえば蓄熱性能が高いので、ふつふつと対流をさせて音が静かになったらぐんと火を弱めれば、焦げすぎてしまうこともありません。

4:鋳物炊飯鍋

熱持ちが良く、低い温度から炊きやすい

 土鍋と並んで人気なのが、鋳物製の炊飯釜。南部鉄器などもあり、こちらも値段やデザインは様々です。鋳物の炊飯釜ブームの先駆けは、野田琺瑯という日本のホーロー製品メーカーが作った「KAMADO」という製品でした。これは、現在は廃盤になっているのですが内蓋もあり、1合~4合くらいまで炊くことが出来る優れものです。デザインもとても美しく人気がありました。欠点は、ホーローのコーティングがやや薄く、少し錆びやすいこと、そしてなんといっても重いことでした。

 この炊飯釜にインスパイアされたように、いまでは様々なメーカーから鋳物の炊飯釜が登場しました。フライパンなどで有名な世界的メーカーのティファールや、鋳物のオーブンウェアメーカーのストウブも製品を出しましたし、電気炊飯器でも、ハイエンドの鋳物ホーロー製の製品が出ています。

5:鋳物やステンレスの鍋

専用鍋に負けない

 炊飯専用ではない鋳物製の鍋や五層構造などのステンレスの鍋でもごはんは炊けます。注意するのは、すでに述べたように、お鍋の大きさと炊くお米の量の兼ね合いです。シチュー用の両手鍋などは、比較的容量が大きいので、少ない量のごはんを炊くのには向いていません。

 炊飯専用の鋳物釜のところで紹介したストウブは、もともとシチューを煮たり、肉などを入れてそのままオーブンで調理をする「ココット」が人気でした。この10年くらい、このココットで炊いたごはんを出すカフェやレストランが増えています。特にオーバル型はおしゃれだと人気で、底が平たく、ごはん以外の料理にももちろん適しています。

 ステンレスや鋳物は食品の臭いが付きにくいので、様々な料理と兼用にできるのもうれしいポイントです。

 炊飯用の鍋は、いろいろなタイプがあり、重さや使い勝手など、それぞれ特徴があります。デザインも豊富で、選ぶのも楽しくなります。ぜひ、お気に入りを見つけて、キッチンの一員に加えてあげてくださいね。

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文・写真◎坂井淳一
協力◎ストウブ(ツヴィリング J.A. ヘンケルス ジャパン)


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