炊飯の極意を知って、極上ごはんを!「新米をガスで炊いてみませんか?」 第2回

失敗しないごはん炊きメソッド「10分-10分-10分」

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1:計量 正確な計量が美味しいごはんへの第一歩

 1合のお米は何グラムかご存じですか? 1合とは150グラム、体積では180ccです。炊飯器付属の計量カップ1杯分に相当します。
 けれど、カップで量るときにお米を揺すりながら入れると、10グラムくらい多く入ってしまうのです。お米を量るときは揺すらずに入れ、「すりきり」で表面を平らにならしましょう。この量が、正確な1合です。

2:洗米 お米は研がなくてもOK!

 次は「洗米」です。よく「米を研ぐ」と言いますが、昔とは違っていまは精米機の性能が上がっているので、軽く洗うだけで大丈夫です。洗米専用ボウルなども売られていますが、ステンレスなどのボウルでいいでしょう。ざるで洗うと、米の表面が荒れてしまうので、避けてください。ざるは水を切るときだけに使います。

 ボウルにたっぷりの水をざっと注いだら、お米を軽く手で混ぜ、その水はすぐに捨てます。お米の表面に付いたぬかをさっと洗い流すためです。お米は最初に加えた水をうんと吸います。ぬか臭い水を吸わないように、すぐに捨てましょう。
「この時は浄水器を通した水や、軟水のミネラルウォーターを使うのがおすすめです」と小野瀬さん。

 水を捨てたら、新しい水を米が浸かる程度に注ぎ、指先を拡げてかるく洗います。この時、水が白く濁りますが、これはぬかではなく、お米のデンプン。あまり流してしまうのは、米の旨みを逃がしてしまうことになります。

 濁った水を流します。水を切るときには、下にざるを置いてもいいでしょう。その後、2~3度水を加えて流す作業を繰り返します。説明したとおり、ここで完全に水が透明になるまで繰り返すと旨みが逃げてしまいます。
「洗ったお米をざるなどにあげて置いておくと良いと言う方もいますが、米の表面が荒れるので避けましょう」と小野瀬さん。

3:浸水の水分量 体積比で1:1プラスアルファ

 米を洗ったら、次は「浸水」です。ごはんを炊く鍋に入れ、分量の水を入れましょう。文化鍋タイプの炊飯鍋には水加減の目盛りがありますが、それがなくとも正確に水分量を決めることが出来ます。
 その方法は、「お米と同じ体積の水で炊く」というものです。つまり、計量カップ1杯分のお米なら計量カップ1杯分の水を、手持ちのコップ1杯分でお米を量ったなら、同じコップで1杯分の水を入れればOKです。

「米を炊くときは、米の1.2倍の水で、と言われています。これが実は魔物なのです。1合のお米は180cc=150グラム。ではその1.2倍の水って? 180ccの1.2倍は216ccです。けれど、150グラムの1.2倍は180グラム、つまり180ccなのです。このへんで、みなさん混同してしまっているんですね」と小野瀬さん。

 米も水も、同じカップで同じ分量を量れば、自然と「水は米の1.2倍」になるというわけです。
 また、小野瀬さんはこうも指摘します。

「3~5合ほどのお米を炊く場合、体積で同量の水を基本にすれば大丈夫ですが、1~2合のやや少なめのごはんを炊く場合は、水分が蒸発しやすいので、10cc~15cc水を多めに入れるのが良いでしょう。また洗米の最初と同様、ここでも浄水器を通した水やミネラルウォーターがおすすめです」

4:浸水 時間はたっぷり、できれば冷やして

 浸水時間をきちんと取ることも大切です。時間は気温、水温によっても変わります。5℃の水なら120分、15℃なら60分、25℃なら40分ほどでうまく浸水できると言われています。理想はじっくり60分以上時間。すると、良質な糖分マルトオリゴ糖が生成されて甘み旨みが増します。また120分以上浸水させても、飽和状態になるのでそれ以上は水を吸いません。

「浸水している間は、もし冷蔵庫に余裕があればそこに入れておきましょう。炊くときに低い温度から一気に温度を上げていく方がおいしく炊けます。理想は0℃ですが、なかなかそこまでは無理でしょう。冷蔵庫に入れておけば、鍋そのものも冷えるので、炊き始めの温度が下がります」

 この浸水の時間で、炊きたてのごはんと一緒に食べるおかずやお味噌汁を作るのもいいでしょう。

5:炊飯開始 沸騰まで10分を目安に!

 さあ、コンロの上に蓋をした炊飯釜を乗せて火を付けます。ガスならば中火の強くらい、IHならば最初に全開にして、その後少し火力を弱めます。
 なるべく低い温度から沸騰させる方が美味しくなりますから、冷蔵庫で鍋を冷やせなかったり、水が温かいようなら、少し水を減らしてその分氷のかけらを入れ、かき混ぜて水全体を均一の温度にしてから炊き始めると良いでしょう。

 沸騰までの時間の目安は10分。それより早い場合は火が強すぎたということです。何度も繰り返せば、自分の家のコンロや使っている鍋の特性が分かってきます。一般に、アルミやステンレスの鍋は熱伝導性が良いので沸騰時間が早く、土鍋や鋳物の鍋は、それ自体が温まりにくいので時間がかかり、強めの火で炊き始めてもOKです。

「この沸騰までの時間で、炊きあがりの食感が変わります。10分を目安にして、それより早いと固めの食感になります。8分くらいはかけたいところです。遅いと柔らかめの食感になります。12分くらいまでで、それよりかかると全体にべちゃっとしたごはんになってしまいます」と小野瀬さん。

 また、LIXIL製品のガスコンロの中には、自動で炊飯してくれるモードがあります。これも、およそ10分で沸騰するように火加減を調整しているのです。

6:炊飯中 沸騰してから10分

 沸騰したところで火を中火の弱くらいに落とします。このとき、弱めすぎると中でうまく対流が起きません。けれど、強すぎると水分が早く蒸発して焦げてしまいます。蓋がうんと重い鋳物の鍋でも、ふつふつと沸騰して湯気が立ち上り、コトコトと蓋を持ち上げたりしますので、そのくらいが目安です。

 土鍋や鋳物の鍋は一度温まると火持ちがいいので、沸騰したらかなり火を弱めてもうまく対流してくれます。

 コトコトいわなくなったら、余分な水分が飛んでいる証拠ですので、火を弱めましょう。火を止めるまでの時間は10分を目安に。時々香りを嗅いで、焦げた臭いがした場合は、そこで火を止めましょう。

「そのまま火を止めれば良いのですが、もう一つの楽しみ『お焦げ』が欲しいときは、火を止める前に火力を最大にして10秒~15秒。これで、美味しいお焦げが出来ます」と小野瀬さん。

7:蒸らし あと10分のガマン!

 蒸らしを10分したら炊きあがりです。この「10分-10分-10分」が、誰でも失敗なく、直火で美味しくごはんを炊くメソッドです。

 電気炊飯器は炊き上がるまでに40分~1時間かかりますが、これは米を洗ってすぐ炊きはじめるせっかちな人がいるため。浸水時間のマージンを含め、時間をかけて炊く設定になっているのです。

「電気炊飯器でも、きちんと浸水をすれば早炊きモードで炊くことをおすすめします。これは『10分-10分-10分』のメソッドとかなり近い炊き方なのです」と小野瀬さん。

 蒸らしが終わったらよくほぐして水分を飛ばし、お茶碗によそって、さあ、今年の新米を召し上がれ!

 次回は、ごはんを直火で炊くための炊飯釜の種類と特徴を解説します!

RICHELLE (リシェル SI)

RICHELLEは、料理をとことん楽しめるキッチンです。

毎日をしなやかに生き生きと過ごす"美しい暮らし"をしたい、そんな想いをかたちにした「あなたと暮らし」にフィットするキッチン。

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お話を伺った方

小野瀬多幸さん

通称「コメ大王」。米・食味鑑定士の資格を持つお米のプロ。店舗を持たず、ネット通販や出張販売で選び抜いたお米を売る。自前の精米機を持って店頭に立ち、その場で精米したてのおこめを対面販売することも。一年中、美味しいお米を求めて日本全国を駆け回る。

文・写真◎坂井淳一

リクシルオーナーズクラブ(年会費無料)