
アニメやマンガでよく見る「骨付き肉」に憧れたことはありませんか? こうした骨付き肉は「マンガ肉」と呼ばれ、大人も子どもも気分がアガる料理の筆頭です。野趣あふれる骨付きマンガ肉は、なんとオーブントースターで簡単に焼けるのです。
イタリアに「鶏の悪魔風(イタリア語でポッロディアボラ)」という定番料理があります。鶏を丸一羽、開きにして焼き、その姿が魔の顔のようだから、という説があります。フライパンで、上に重しをのせてぺたんこに焼くのですが、家庭ではちょっと大変です。
そこで、鶏の骨付きもも肉を使って、オーブントースターで焼いてしまいましょう。とても簡単な料理なのに、ディナーの立派なメイン料理として食卓に乗せることができます。
鶏もも肉に塩を軽くまぶし、バットなどに潰したニンニク、種を抜いた鷹の爪、オリーブオイル、ローズマリーとともに漬け込み(マリネ)ます。1~2時間置いておけばいいでしょう。前の日に仕込んでおいても大丈夫。バットではなく、ジッパーの付いた食品バックで寝かしてもかまいません。
冷蔵庫でマリネしたなら、できれば直前に外に出して肉を室温に戻しておきましょう。
天板に肉がくっつくのを防止するために、オーブンシートを敷いて上に肉を乗せ、焼き始めます。途中で天板のオイルをスプーンで肉の上にかけたり、アルミフォイルをかぶせたりして、焦げるのを調整します。
肉の大きさにもよりますが、15分~30分くらいで焼けます。焼き加減は、表面にこんがり焼き色が付いて、竹串などを肉に刺してから唇に当て、熱ければ中まで火が入っている証拠。オーブンを止めてから、そのまま5分くらい置いておくと、余熱でじんわり中に火が入ります。
皿に乗せ、半分に切ったレモンや粒マスタードを添えましょう。焼いた油を少しかけると、辛みが増します。フランスでは、鶏の悪魔風という料理は、マスタードを効かせた料理のことを言います。イタリアとフランスで意味が違うのが面白いですね。こんがり焼けたニンニクの臭いもさほど気にならず、美味しくいただけます。
ワインが進む料理。あとはサラダでも作れば、素敵なディナーになる。
バーベキュー料理の定番と言えば骨付き豚のスペアリブ。ハワイなどでは、家庭ごとに独自のバーベキューソースのレシピがあり、ホノルルのスーパーではバーベキューソースもすらりと並んでいます。フルーツを入れたり、さまざまな材料を混ぜたりして一晩漬け込むと、手間がかかります。
家庭では、思い立ったらすぐに作りたいもの。美味しく、あっという間に作れるスペアリブのレシピがあります。ポイントは「オイスターソース」です。
オイスターソースはさまざまなものが売られていますが、なるべくアミノ酸(化学調味料)が使われていないものを選びましょう。化学調味料が強いものは、味が不自然なものが少なくありません。また、貝柱入りのオイスターソースなど、他の食材の旨みが加わったものもおすすめです。
オイスターソースにネギ、ショウガ、刻んだ豆鼓、紹興酒を入れ、塩を軽くしたスペアリブにまぶします。バットに置いていいですし、ジッパー付きビニール袋などを使うのもいいでしょう。
豆鼓(とうち)は豆を発酵させたもので、日本の浜納豆、大徳寺納豆などのルーツと言われています。旨みが強く、香りがたちます。これを細かく刻みましょう。
紹興酒は香りを付けるためでもありますが、粘度が高いオイスターソースをスペアリブになじませるための役割でもあります。紹興酒がなければ、水や日本酒などでもかまいません。
すぐに焼くのなら、冷蔵庫ではなく、室温で置いておきましょう。5分も漬けておけば十分です。もし後で焼くならば、もちろん冷蔵庫へ。
天板にオーブンシートを敷き、スペアリブをのせて焼きます。焼き時間は大きさに寄りますが、10分?15分ほどです。お皿にベビーリーフなどをのせ、その上に焼けたスペアリブを飾りましょう。
骨付き肉は骨のキワが美味しいので、手でもってかじりつくのも楽しいですよ!
最近では、スーパーのお肉売り場でもラム肉が売られるようになってきました。羊肉は脂肪分が少なくヘルシー、そしてダイエット効果があるカルニチンが豚肉の倍もあります。若い女性を中心に、「ラムチョップ」と呼ばれる骨付きの羊肉が人気です。
けれど、「ラム肉はちょっとクセがあって苦手」という人も少なくありません。そこで、ラム肉にぴったりのクミンというスパイスと、香り高いフレッシュハーブを使い、においが気にならず美味しいラム料理をご紹介します。
最近では、骨付きのラム(子羊)は小さいお子さんにも大人気。飼育方法も工夫され、昔のような「臭くて食べられない」という肉もありません。ラムならば、苦手意識もなくなる美味しい料理になります。
ラムチョップに塩とクミンをまぶし、室温で置いておきます。肉が冷えたままではきれいに焼けないからです。
ボウルなどに入れたパン粉に、刻んだパクチーやイタリアンパセリをすりおろし、ペコリーノチーズ(羊のチーズ)かパルミジャーノレッジャーノ(牛のチーズ)に、オリーブオイルを加えてよく混ぜます。パクチーやペコリーノチーズが苦手なら、パセリだけでも構いません。パルミジャーノレッジャーノなら食べやすくなります。
バットなどに香草パン粉を入れ、ラムチョップにパン粉をまぶします。上から押さえるようにして、しっかりつけましょう。
天板にオーブンシートを敷いて、ラムチョップを並べて焼きます。
オーブントースターは、あらかじめ予熱をしておいた方が美味しく焼けます。オーブンだと、フライパンなどの直火で焼くより火が柔らかく回るので、肉が固くなりにくいのです。パン粉の衣をまぶしているので、これも火が強く当たりすぎないような効果をもたらしてくれます。
今回はベビーリーフと、スライサーで薄切りにしたトマトを添えて、100円ショップで買ってきた木製の小さいまな板に盛り付けました。陶器や磁器だけでなく、まな板をお皿代わりにするのも骨付き肉料理の雰囲気を盛り上げてくれます。
クミンのちょっとエスニックな香りとパクチーやパセリの香りが食欲をそそります。
クミンのちょっとエスニックな香りとパクチーやパセリの香りが食欲をそそる。
(第6回に続く)
文◎坂井淳一(酒ごはん研究所)
「今日なにを呑む?」から始まる食事の新しいスタイルを提案する酒ごはん研究所主任研究員。料理はもちろん、ワイン、日本酒、本格焼酎やスピリッツ、カクテルとあらゆるお酒を研究している。
写真◎平野晋子