
スーパーで買えるもの、手軽に使える食材で、簡単に作れて、家族で「美味しいね」と言いながら食べられる料理をご紹介しています。今回は、餃子、春巻き、ワンタンなど、もしかすると冷蔵庫で眠っているかもしれない中華の「皮」を使って、ちょっと面白い料理を創作してみましょう。
「ワンタンの皮」でイタリア料理のラビオリを作ってみましょう。この料理は、2020年に惜しくも閉店した東京・西荻窪の居酒屋「風神亭」の名物でした。ご主人の許可を得て、それを家庭用にアレンジしました。最後に上から熱い油をかけ回す本格中華料理の技「清蒸(チンジョン)」を使った絶品です。友人たちを呼んでのパーティーや、自宅居酒屋でも大ウケ間違いなしです。熱々を楽しんでください!
ボウルに、豚挽肉、みじん切りのネギ、塩ひとつまみ、すりおろしたニンニクとショウガ、酒を少し、香り付けのごま油をひとたらしして、よく混ぜます。これが肉だねになります。ニンニクやショウガはチューブのものでもかまいません。粘り気が出るまでよく練りましょう。ごま油も控え目に。あまり入れすぎると味が強くなりすぎるからです。肉だねをワンタンの皮に少し乗せ、ワンタンの皮の2辺を水で濡らして、三角形に折ります。
最後にトッピングをする白髪ネギも作っておきましょう。
肉だねを乗せるときにスプーンを使ってもいいのですが、竹串を使ってちょっとだけ乗せると、肉だねが多くなりすぎず、いい感じで包めます。肉だねは多すぎないほうが、ワンタンの皮の食感を楽しめるのです。ワンタンの中に空気が残らないように気をつけると、茹でたときに破裂しにくくなります。
ワンタンがたくさんできてしまったら冷凍して保存しましょう。
鍋にお湯を沸かします。一方で、小さめのフライパンに種を抜いた鷹の爪と油を入れ、弱火にかけます。唐辛子が焦げすぎないように気をつけてください。油はサラダ油でかまいませんが、オリーブオイルなどでもいいでしょう。
ワンタンを鍋の中に入れます。あまりグラグラさせず、うまく対流するくらいの火加減で1~2分茹でます。火はあっという間に通ります。浮いてきたら茹で上がり。ざるで湯を切るか、網杓子のようなものですくって器に盛ります。
器に並べたワンタンの上にトッピングの白髪ネギをのせ、だし醤油をかけ回します。白髪ネギの代わりにパクチーの葉っぱをトッピングしてもマッチします。
その上から、熱していた辛い油をかけます。「ジュー!」っといい音がしますので、ここは食卓でやってもいいでしょう。熱いうちに食べましょう。
バリエーションとして、羊の挽肉にクミンなどのスパイスを加えて肉だねとし、茹であげたところにトマトソースをかける食べ方もあります。これはまさに、イタリア料理の「ラビオリ」です。
ワンタンの皮の食感がやみつきに。ひとつの料理をもとに、いろいろ工夫して、自分なりのオリジナルレシピを考えると、料理の幅が広がりはますます楽しくなる。
パーティー料理の定番ながら、家庭で作るのがなかなか難しいピッツァ。本格的なナポリピッツァは生地を発酵するところからやらないといけないし、結局は専門店のテイクアウトや宅配に頼ってしまいます。
けれど、生地の上に好きなトッピングを乗せて、ワイワイしながら焼くのはなかなか楽しいと思いませんか? というわけで、餃子の皮をピッツか生地に見立てて、オーブントースターで焼きながらパーティーを開きましょう。
※トッピングの材料は餃子ピッツァ1枚あたりの分量
ナポリ風
アメリカン
ボスカイオーラ風
ビスマルク風
フライパンにオリーブオイル、種を抜いた鷹の爪1本、つぶしたニンニク1片を入れ、弱火でゆっくり熱します。そこにトマト缶を入れ、塩をしてひと煮立ち。裏ごし器やざるなどとヘラを使って裏ごしすれば、なめらかなソースになります。
家庭の料理ですから、裏ごしせず、弱火で煮詰まりすぎないように、トマトが柔らかくなるまで煮ても構いません。塩味はあまり強すぎないほうが、トマトの風味が増します。
このトマトソースは、余ったらパスタや肉を焼いたソースにすることもできます。容器に入れて冷蔵すれば1週間くらい、冷凍すれば1か月以上保存できます。
オーブンシートを四角く切って餃子の皮を乗せます。そこに、ソースをスプーンなどで塗り、好みのトッピングをのせたら準備完了です。
左下はナポリ風ピッツァ(ピッツァ・ナポレターナ)。トマトソースとモッツァレラチーズのシンプルなピッツァです。モッツァレラチーズはスーパーで売っている小さい玉になっている者が使いやすいでしょう。手でちぎってのせます。
右下はアメリカンピザ。宅配ピザ風です。作ったトマトソースでもいいですが、あえて市販の塩や旨みが強めの「ピザソース」を使ってみました。サラミサーで薄切りにしたピーマン、そしてとろけるチーズは定番ですね。
左上は「ボスカイオーラ」。木こり風という意味です。キノコを使いますが、どんな種類でも構いません。あらかじめさっとオリーブオイルで炒めておきましょう。
マッシュルームはスライスして、生のまま乗せてもかまいません。日本では木の年輪に見えるツナを乗せることが多いのですが、イタリアでは使いません。もちろん、好き好きでOKです。
右上はビスマルク風。鉄血宰相と言われたドイツのビスマルクの好物にちなんで、ヨーロッパでは、半熟玉子や目玉焼きをのせた料理は「ビスマルク風」と呼びます。ここでは、生ハムをのせ、モッツァレラチーズで土手を作って真ん中にウズラの玉子をのせます。
予熱をしたオーブントースターに入れ、焼きます。上からオリーブオイルをかけ回しましょう。餃子の皮の周りがパリッとなり、チーズなどが溶ければ焼き上がりです。一度に4枚くらい焼けるので、食べながら次のピッツァを用意しましょう。
ナポリ風には上にフレッシュのバジル、ビスマルク風にはフレッシュのルッコラを乗せると、とても餃子の皮で作ったとは思えない、いい香りと味わいになります。
焼き上がり。トッピングにルールはないのでツナコーンマヨなどお好みで。
ワンタン、餃子と並ぶ中華食材の皮と言えば春巻き。揚げものは面倒くさいし、いまでは春巻きも米粉を使った皮で作るベトナム風生春巻きの方が人気でしょう。
でも、春巻きの皮は優れもの。スイーツに使えるのです。ちょっとお茶がしたいなというときに、パンを焼くオーブントースターでぱぱっと作れるのでおすすめです。
りんごを4つに切って、種の部分を取ったらスライサーでスライスします。この薄さがポイントです。
オーブントースターの天板にオーブンシートを敷いて溶かしバターを塗ります。その上に、スライスしたリンゴをきれいに並べます。
りんごの上から、好きなジャムを塗ります。今回は桃とキウイのジャムを使いましたが、マーマレードなど、好みのジャムでかまいません。ジャムを塗った後に、好みではちみつを少し塗るのもおすすめです。さらに、上からグラニュー糖を少し振りかけます。砂糖が少し焦げた風味を付けるためで、なくてもかまいません。
予熱をしたオーブントースターに入れます。春巻きの皮の周辺が焦げやすいので、気になるようなら、途中でアルミフォイルなどをかぶせます。4~5分でリンゴにも火が通り、皮の周辺がこんがりします。
皮の端がきれいに焼けたらできあがり。ピッツァカッターや包丁で切りましょう。ピッツァカッターがあると、リンゴを崩さずに切れます。器に乗せ、ミントの葉を散らしてできあがりです。
夏ならば、冷たいミントティー、冬ならば紅茶にぴったり。
(第5回に続く)
文◎坂井淳一(酒ごはん研究所)
「今日なにを呑む?」から始まる食事の新しいスタイルを提案する酒ごはん研究所主任研究員。料理はもちろん、ワイン、日本酒、本格焼酎やスピリッツ、カクテルとあらゆるお酒を研究している。
写真◎平野晋子