鍋で炊いたごはんの漬け丼
炊飯専用鍋や土鍋など、お鍋でガスの火で炊く白めし。最近は炊飯器も美味しく炊けるようになりましたが、直火で炊くごはんは本当に美味しいものです。ちょっとしたコツさえ覚えれば、決して難しくはありません。
おいしく炊けたごはんに漬けにしたお刺身をのせるだけ。シンプルにして無類の美味しさ。まさに、ぱぱっとできる簡単料理です。
【材料】(2人分)
- お米(ひゃくまん穀)
2合 - お刺身(※1)
2人前 - 醤油
大さじ2~3 - 日本酒
醤油と同量 - ショウガ
一片 - 青ネギ、三ツ葉など
適宜
※1:お刺身は、カツオやワラサ(ハマチ)、マグロの赤身など、スーパーで売られている盛り合わせの刺身で大丈夫です。
◎作り方
1.洗米
今回、白めしを炊くために選んだのは「ひゃくまん穀」という、石川県が9年もかけて産み出した、新しい品種のお米です。コシヒカリより粒が大きめで、炊きたての熱々ごはんでも、冷たくしても甘みと旨みが感じらます。値段もお手頃です。
水の中にお米を入れ、1合につき10回ほど、手でかき回します。最近のお米は精米技術が優れているため、さっと洗う程度の研ぎ方でいいのです。水が白く濁ったら水を切り、1~2回新しい水を加えてさっとかき混ぜて水を切れば研ぎ上がりです。
2.浸水
洗ったお米は、すぐにごはんを炊く鍋の中に入れ、水を加えて「浸水」をします。夏なら最低30分、冬ならば1時間くらい置いておきましょう。その時間でお米の中に水が入り込んで、おいしいごはんになります。
水の量は、よくお米の量に対して1.2倍と言われます。これは1合のお米に対して1合の水で、150g:180gで重量比1.2倍の意味です。しかし、炊飯器の水の目盛りは、実は体積比1.2倍で、重量比では1.4倍くらいの水加減になっています。これはやや柔らかめに炊くためであり、まずは1杯のお米に1杯プラスほんの少しの水というところから炊き始めてみてください。一度炊いてもう少し柔らかい方が好みだなと思ったら、少し水を多めにする、という水分量でいいでしょう。
3.「漬け」の作り方
お米を浸水している間に、お刺身を「漬け」にします。切ってあるお刺身を買ってきてそれを漬け込むだけです。もしいいお刺身がなければ、魚屋さんではお刺身用の「さく」が売っています。これを使ってもいいでしょう。
酒:1、醤油:1の割合で混ぜた漬け地に漬け込みます。ラップをして、ごはんが炊けるまで冷蔵庫に。ショウガの千切りを加えて風味を増してもいいです。カツオやワラサなどの「青物」と呼ばれる魚はショウガとよく合います。
4.直火ごはんの炊き方
ごはんを炊きましょう。鍋をガス台に乗せ、中火くらいで火をかけます。このとき、夏ならば氷を1、2片入れると美味しく炊けます。その分、浸水の時の水は少なめに。
まずは、沸騰するまで10分が理想的です。沸騰したら、少し火を弱め、10分炊きます。
最初は蓋がカタカタ言いながら蒸気が出て、蓋の周りに白い粘り気のある水が上がってきます。これはいい状態。そこからだんだん炊けてくると、蒸気がなくなり、蓋も静かになってきます。時々鍋から上がってくる香りを嗅ぎましょう。火が強くて水分が早く飛ぶと、少し焦げた香りがします。そんなときはそこで火を止めます。
10分経ったところで、もう一度点火し、20秒ほどガスの火を全開にします。これで、美味しい「おこげ」を作るのです。そして火を止めて10分間蒸らします。
沸騰まで10分、そこから10分炊き、蒸らし10分が、直火で美味しくお米を炊くコツです。
蒸らしが終わったら、ごはんをしゃもじでほぐします。ここをきちんとやることで、鍋の中でくっついていた米粒がはなれ、ふんわりと美味しいごはんになるのです。
熱々のごはんを器に盛り、漬けにしたお刺身を並べます。上に、一緒に漬け込んでいたショウガの千切りや、小口に切った青ネギや三ツ葉などをぱらりとのせます。熱々のごはんなので、すぐにいただきましょう。ガスの直火で炊いたごはんは、本当に美味しいものです。
◎できあがり
美味しくておかわりがしたくなるので、漬けは少し多めにつくっておくのが正解。
夏バテ解消たこめし
炊飯器で炊く夏の味覚「たこめし」をご紹介しましょう。
夏至から数えて11日目を「半夏生(はんげしょう)」と言い、この日までに田植えを終わらせるという農家にとって重要な日のひとつ。そして、この日にたこを食べる風習が残っています。
たこはタウリンが豊富で、疲労回復効果があると言われ、そのため、梅雨の後半にさしかかるこの時期に食べて夏バテ解消をというわけです。瀬戸内海では干したたこを水に戻して、そのだしでごはんを炊きますが、それでは手間がかかるので、今回は茹でたたこを使って炊飯器で簡単に作ります。
【材料】(2人分)
- 米(にこまる)
2合 - 茹でたたこ
小ぶりのものの足3本くらい - だし昆布
1片 - ショウガ
1片 - 酒
小さじ2 - 塩
ひとつまみ - 醤油
小さじ2 - 実山椒(あれば)
適宜 - 三ツ葉
適宜
◎作り方
1.昆布を入れて浸水
今回は「にこまる」というお米を使って炊いてみましょう。「にこまる」は、西日本を中心に栽培が広がっている比較的新しい品種で、一粒ひとつぶがしっかりして、もっちりとした食感、そしてだしなどを吸い込みやすいのが特徴です。
米を洗ったら炊飯器の底に昆布をひとかけら入れ米と同量より少し少ない体積の水を入れて浸水します。炊く直前に酒・醤油を加えるので、同量だと水分が少し多すぎて、ごはんが柔らかめになるからです。
2.「早炊き」モードで炊飯
30分?1時間浸水させたところで、ぶつ切りにしたたこと、千切りにしたショウガ、醤油・酒・塩を入れます。醤油は風味付けなので、大さじ2くらい入れればいいでしょう。酒も同じくらい、そこに塩をひとつまみ。食べるときに味が物足りなかったら、上からぱらりと塩かければいいので、控え目にするのがコツ。
もし、あく抜きした生の実山椒があれば、ひとつかみ入れてもいいでしょう。氷をひとかけら入れることも忘れないでください。
炊き上がったら10分ほど蒸らしてから、しゃもじでかき混ぜてごはんをほぐす。
炊飯器のスイッチは「早炊き」モードを選択。大抵の炊飯器では、ガスと同じ「沸騰まで約10分、その後さらに10分~15分で炊くモード」なので、ガスの火に近い炊き方になります。
漬け丼同様、もし鍋や土鍋を使って直火で炊かれるときも、「10分、10分、10分」の原則を守れば同じ要領で炊けます。蒸らしが終わったらよくほぐしましょう。
◎できあがり
三ツ葉などをあしらうとごちそう感が増す。残ったらおにぎりにして後でいただくのもおすすめ。
ちょっと贅沢うなぎごはん
夏と言えばうなぎ! 実はうなぎは冬の方が脂がのって美味しいのですが、江戸時代に平賀源内が考案したキャッチコピーのおかげで、うなぎは土用丑の日に食べるのが一般的です。もっとも、それ以前、万葉集にも、大伴家持が「夏痩せにはウナギを食べましょう」と歌っていますので、日本人のDNAには「夏はうなぎ」と刻み込まれているのかもしれません。
けれど、値段も高騰してなかなか手軽には食べられなくなりました。そこで、蒲焼きを1本買って、家族みんなで楽しめる「うなぎごはん」を作ってみましょう。
ポイントは「蒲焼きのたれでごはんを炊く」ことです。甘くて美味しい蒲焼きのたれを使って、絶品のうなぎ炊き込みごはんが作れます。
【材料】(2人分)
- 米(新之介)
2合 - うなぎ蒲焼き
1本 - 蒲焼きのたれ
30ccくらい - ゴボウ
10cmくらい - 薄揚げ
1/2枚 - だし昆布
1片 - かいわれ
適宜
◎作り方
1.昆布を入れて浸水
今回使うのは「新之介」というお米です。コシヒカリとは違った食味のお米として、新潟で産み出されました。蒲焼き単純にのせるうな丼は、実はたれをはじくようなしっかりした米の「つや姫」などがよく合うのですが、今回は「混ぜ込みごはん」なので、粒立ちのよさと力強く濃厚な甘みを感じるこのお米を選びました。
2.うなぎのたれを加えて炊飯
浸水が終わったら、蒲焼きに付いてきた、あるいは一緒に買ったうなぎのたれを加えます。昔のうなぎ屋さんのようにうなぎの脂が加わったたれではないでしょうが、醤油とみりんや砂糖などの比率がよくできていて、これを加えてごはんを炊くと、とても美味しくなるのです。
ここに、熱湯を上からかけて油抜きをしてから細かく刻んだ薄揚げと、ピーラーなどで作ったゴボウの笹がき(もちろん包丁でもかまいません)を加えます。
準備ができたら早炊きモードで炊き始めましょう。うなぎはこの段階では入れません。
3.うなぎを切り分ける
蒲焼きは、真ん中の美味しいところは大きめにカットし、端のほうは細かく刻みます。大きめにカットした部分は最後にトッピングするため、とっておきます。
4.うなぎ投入
ごはんが炊けたところで、すぐに蓋を開け、細かく切ったうなぎを入れ、すぐに蓋を閉めます。炊けたごはんを蒸らしている間に、うなぎも余熱で温められるという算段です。10分程度蒸らしましょう。その間に、トッピング用のうなぎを焼き直します。
天板にオーブンシートを敷き、その上にのせてオーブントースターで5分くらい焼き直すことで、うなぎの脂で端っこがカリッとなって食感もアップします。うなぎ屋さんのおいしいうな丼は、ごはんも熱々、うなぎも熱々。それをイメージしたこの一手間で、美味しさは倍増します。
10分蒸らしたらごはんをほぐし、茶碗に盛ります。熱々のトッピング用うなぎをのせたら、かいわれや三ツ葉などをあしらってできあがりです。
◎できあがり
たれの甘みがうまく回って、とにかく箸が進む美味しいごはん。
スペイン風あさりの炊き込みごはん
スペインの米料理というと、鉄の浅い鍋で炊くパエージャ(パエーリャ)が有名ですが、その原型とも言われる、カスエラという土鍋で作る炊き込みごはんです。その中でも人気の家庭料理が「アロス・コン・アルメハス」という「あさりごはん」。これを手軽に、炊飯器で炊いてみましょう。
あさりの旨みとニンニクやピーマン、タマネギの風味が豊かな、華やかな米料理です。お友達や親戚を呼んでのパーティー料理としてもおすすめです。
【材料】(2人分)
- 米(風さやか)
2合 - あさり
300~400g - タマネギ
中1個 - ピーマン(青・赤)
各1/2個 - ニンニク
2片 - 白ワイン
180cc - エクストラバージンオリーブオイル
大さじ1~2 - ローリエ
1枚 - イタリアンパセリ
適宜
◎作り方
1.アサリをワイン蒸し
アサリは塩水とともにボウルなどに入れ上から蓋をして砂出しをしてください。その後、殻同士をこすり合わせるようにして、殻の表面に付いた汚れを落とします。
タマネギ(一個分くらいたっぷり使いましょう)、赤・青のピーマン(パプリカ)、ニンニクをみじん切りにして、オリーブオイルでタマネギが透明になるまで炒めます。
そこにアサリを入れ、カップ1杯くらいの白ワインを注ぎます。蓋をして、あさりが開いたら火を止め、あさりのだしが出た白ワインをコップなどに移します。
2.スープと水を投入
今回使ったのは「風さやか」という長野のお米です。このお米はさっぱりとした食感で、香りもよく、旨みが強いことが特徴です。このお米はスペインのお米よりスペイン料理に合うと、パスペインからやってきた料理人の中にも、「風さやか」をエージャなどに使う人がいるほどです。
お米は洗いません。炊飯器にそのまま入れ、アサリのワイン蒸しで出たアサリと野菜の旨みがたっぷり入ったスープと水を合わせて、体積比で同量か少し多いくらいにして炊飯器に入れます。
3.あさりを入れて炊飯
ワイン蒸ししたあさりや野菜も加え、塩をひとつまみ、ローリエを1枚のせて、炊飯器のスイッチを早炊きモードで入れます。
炊き上がったら10分ほど蒸らします。蓋を開けてしゃもじでごはんとあさりを混ぜ込みますが、トッピング用のアサリを数個、ここで取り出しておいてもいいでしょう。お茶碗でもかまいませんが、スペイン風なので、パスタ皿などに盛って、スプーンやフォークを添えるのはいかがでしょうか。上にイタリアンパセリをちょっと飾るもアクセントになります。
和食の炊き込みごはんとは違い、オリーブオイルのコクや白ワインのかすかな酸味、タマネギの甘み、あさりから出たスープの旨みなどが重層的にやってくるリッチな味わいの一皿です。
◎できあがり
キンキンに冷えた白ワインを合わせるもおすすめ。
(第4回に続く)
会員登録 が必要です