実りの秋を楽しむ“ベランダー・ライフ” [後編]

土へのこだわりが成功の近道。キーワードは“シ・リ・ミ”

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おいしく育てるには、まずは土づくり

 ベランダ農園を開設するにあたり、種をまく前にまず用意したいのが、プランターと土、そして水やりに必要なジョウロです。
 初めての方であれば、オーソドックスなプラスチック製の標準タイプ(横65cm×縦22cm×深さ18cm)のプランターがいいでしょう。
 このサイズのプランターは、リーフレタス、コマツナ、ホウレンソウなどの葉物野菜や、ラディッシュ、小カブなどに向いています。これらの野菜は初心者でも育てやすいので、このプランターに種まきしていくことにしましょう。

「土へのこだわりが成功への近道です。『シ(質)・リ(量)・ミ(水)』の3つのポイントを押さえておきましょう」と言うタキイ種苗広報出版部の荒木匡子さんのアドバイスをもとに、まずは土づくりです。

「土は種苗店・園芸店・ホームセンターで売っている培養土でOKです。ただ、シ(質)にはこだわってください」

 というのも、栽培は「土が命」なので、安価なものはうまく育たないことが多いからです。
 最適なのは、チッソ、リン酸、カリウムが混ぜ込まれた野菜用に調整された培養土(野菜の土)。ピートモス、バーミキュライト、パーライトなどがブレンドされ、1~2か月分の肥料が入っているものがいいでしょう。

「種苗店・園芸店・ホ-ムセンターの店員さんに、例えば、リーフレタスを育てる場合にはどの土がいいかなどと相談して、作物に合わせた商品を選んでもらうのもいいですし、プランター栽培向けに配合した土もありますので、これもおすすめです」

「シ・リ・ミ」のリ(量)は、培養土の量です。
 プランターいっぱいのたっぷりの培養土で栽培すれば、水分も十分に確保でき、根をしっかり張ることができ、環境の変化に対応しやすくなります。

 最後はミ(水)。最近、店頭で販売されている培養土は、 軽い培養土が多くなっています。
 水分を減らし、土に含まれる肥料の溶け出しを防いでいるからです。ですから、売っている状態では水がまったく足りないのです。

『シ(質)・リ(量)・ミ(水)』の3つのポイントを押さえて土づくり。これがベランダ栽培成功の近道。

 それでは、まず土づくりです。
 プランターにはいきなり土を入れません。水はけをよくするために、プランターの底に「鉢底ネット」を敷き、「鉢底石」を入れましょう。
 鉢底石は土の保水性、排水性をよくするもので、台所の水切りネットを入れておくと、後で土と分別しやすくなります。どうして手にはいらなければ、なくても大丈夫です。

 それからプランターの深さの半分ほど培養土を入れて、水をたっぷり注ぎます。前述したように開封したての培養土はふわふわしていて水分が足りません。水をやることで土が沈みこみますので、さらにプランターの上から2~3cmの所まで土を足して、最後に再びたっぷりと水やりをします。プランターの底からポタポタと水が流れる程度を目安にしましょう。

虫の対策も忘れずに!

無農薬派には欠かせない防虫ネット。ホームセンターなどで入手できる。

 このように、種をまいてから収穫まで、土の表面が乾いたら十分に水やりをして追肥をしていけば、大きな失敗をすることはないでしょう。しかし、油断をすると「やられた!」ということがあります。それは虫です。

 地面に近い1階はもとより、2階のベランダや屋上で栽培をしても、葉を食べる虫はどこからともなくやってきます。殺虫剤で駆除するのが一般的ですが、無農薬で育てたい方は、プランターにネットをかけて防ぐといいでしょう。プランターのサイズに合ったネットも市販されています。

 今回はリーフレタスの栽培方法をご紹介しましたが、同様に葉菜や根菜もプランターで栽培できます。種まきの時期をずらすことで収穫に時間差をつけ、毎日別の野菜の収穫を楽しむこともできます。

「根菜はあまりプランター向きとは言えませんが、お好みのサイズでも収穫できる『三太郎』というダイコンもあります。こうした品種なら、標準的なプランターでも栽培可能。ちょっと変わった野菜も育てたいという方はぜひ挑戦してみてください。スーパーでもあまり見かけないような珍しい野菜を育てられるのも、家庭菜園の楽しみのひとつです」

 たとえ殺風景なベランダでも、こうして作物をつくることで緑が増えると、また違った風景になることでしょう。

来春には果菜に挑戦を

たくさん実がなるミニトマトも春から育てる野菜の定番。収穫してそのまま食べられるのが魅力。また、ホームセンターでは「袋栽培」専用の土も販売されており、省スペースなので、ベランダでの農園におすすめ。

グリーン・カーテンの定番ゴーヤ(ニガウリ)。これも栽培が容易で、実も食べられるのでおすすめ。

 秋・冬の野菜は種まきから栽培を進めますが、春に栽培を始めるトマト、キュウリ、ナスなどの果菜(かさい)は、苗から育てるのがいいでしょう。
「ゴールデンウイーク前後には、種苗店・園芸店・ホームセンターでこれらの苗がたくさん出回ります。栽培期間が短く済むので、苗からの栽培がおすすめです」

 また、夏の暑さ対策としてすっかり定着したグリ-ン・カ-テンにぴったりのゴーヤも、苗から育てるのがいいでしょう。

「暑さを和らげることが一番の目的なので、葉が大きく、上に伸びるつる性のものがおすすめです。野菜や花でいろいろ種類はありますが、育てやすいゴーヤやルコウソウ、風船カズラがおすすめです」

 次回は、プランターで収穫した野菜のみずみずしさを味わえるおすすめレシピを紹介します。

(レシピ編に続く)

お話を伺った方

荒木匡子さん

タキイ種苗株会社 広報出版部広報担当
1835年(天保6年)創業の種苗メーカー。広報担当として、会社の魅力や、花・野菜、農園芸資材などオリジナル商品を中心に、さまざまなメディアを通してPRしている。
タキイ種苗株式会社:https://www.takii.co.jp/
タキイ種苗株式会社通販係:https://shop.takii.co.jp/

文◎三星雅人 写真提供◎タキイ種苗

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