ベランダ・テラスをプチリフォーム[第3回]

テラスをセカンドキッチンへ

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別荘地ならではのゆったりした敷地

 東京から電車で2時間半、静岡県の伊豆高原にあるログハウスを所有する女性オーナーは、東京と伊豆高原の二拠点生活を送っています。トライアスロンに参加したこともあるスポーツウーマンですが、「実はインドア派」と言います。もともと飲食店の経営もされていて、ご自身も和食からフランス料理までなんでも作る料理通。伊豆高原駅からタクシーで10分ほどのこの家に来ると、食材の買い出し以外はあまり外出せず、のんびりと過ごす「おうち好き」なのです。

 大きな三角屋根が特徴的ながら、丸太はむき出しになってはおらず、外観からはこの建物がログハウスだとはわかりません。最近はメンテナンス性を考えて、こうしたタイプのログハウスが増えているそうです。LIXILのサッシを使い、大きな開口部も断熱性抜群です。

 そんなログハウスは、外から見えない広々とした庭に面した開口部にウッドデッキが設けられています。頻繁に東京からの友人を呼んでイベントを開くそうで、自ら料理の腕を振るったり、星付きレストランのシェフや腕利きのソムリエ、バーテンダーを呼んで特別な料理とお酒を楽しんだりすることもあるそうです。広々とした庭には芝生を敷き、テントをひと張り。時々、グランピング気分も味わっていると言います。

 今は少しずつ手を加えながら、自分好みのスタイルに変えている途中だそう。どんなリフォームをしながら、将来的にどうしていくのかプランを伺いました。

リビングダイニングを飛び出した
ウッドデッキキッチン

テラスから降りたところに薪や炭を熱源にしたグリルを設置。肉の表面を焼いた後、低温での火入れは屋内キッチンのオーブンで……という使い分けもできます。

 オーナーが最近取り組んでいるのは「ウッドデッキをセカンドキッチンにする」こと。せっかく空気のよい伊豆高原までやってきたのですから、自分もお客様も、デッキに出ていい空気を吸い、清々しい景色や星空を眺めながら過ごしたいと考えたのだそうです。

 屋内のキッチンはプロ級の設備を整えながら、デッキや庭に薪や炭をおこせる設備を作り、肉の火入れなどはなるべくそこでできるようにしました。

 屋根のあるデッキの壁際には、プロ仕様のピッツァ窯を設置。最近は薪窯も人気ですが、窯自体を温める時間と薪の消費量、予熱が早いというメリットを考え、安定して焼ける電気式にしたそうです。晴れた日は屋根がない部分に設置したグリルを、雨の時は屋根の下のウッドデッキに置いた炭コンロなどで炭火焼きを楽しむそうです。

 ここまで設備が充実していると、おうちBBQでさまざまな料理を作れます。大きな塊肉を焼いたり、野菜をグリルしたり、パエリアを作ったり、ダッチオーブンで鶏を丸焼きにしたり。このお宅には燻製機もあるので、できたての燻製料理を味わったりと、多彩な料理が楽しめます。

 キッチンで下ごしらえした食材をオープンな空間で調理することで、みんなで食事を作る空気が醸されます。火をおこすのが得意な人、肉や魚を焼くのが得意な人、料理は得意じゃない人は食器を洗うなど、それぞれ「自分の居場所」を見つけて参加するようになります。

 こうした開放的な空間を作ることで、普段はあまり料理をしない男性や子どもも積極的に参加するようになるかもしれません。料理に対する意識を「面倒くさい家事」から「遊び」に変えていくことで、日々の生活がより楽しいものになっていくことでしょう。

炎を眺めることで気分が落ち着く

庭には「ティピー」とカウンターも。

 テラス前には、北米先住民のテント「ティピー」の形を思わせる、たき火用の薪ストーブを置きました。テラスに座りながら炎を眺めていると、誰しも時間が経つのを忘れてしまいます。雨でもたき火を楽しめる趣向です。

 またその隣には、カウンターを設けました。目の前の庭が広々としているので、天気がよく気温が高すぎない日には、ここでランチを取ったり、軽くお酒を飲んだりして楽しんでいるそうです。

静かで落ち着いた雰囲気の2階テラス

 1階のテラスの屋根になっているのは、プライベートスペースである2階のテラスです。ここにも、さまざまな工夫がなされています。ログハウスの大きな三角屋根が庇(ひさし)になっているので、少しくらいの雨ならば濡れることはありません。

 周囲は緑に囲まれていて、外からの視線を気にせずにすみますから、テラスの手すりは室内からの視界の邪魔にならないタイプを採用。床は室内と同一平面です。そして窓部分は全面開放できるタイプのサッシが採用されています。オーナーは、ここでは読書をしたり、仕事をしたりと、ゆったりした環境の中で過ごすことを重視したそうです。

 そして、テラスの端の部分は、屋根の庇に隠れた秘密のスペースが。オーナーはここを、ちょっとお昼寝ができるスペースにしました。

 折りたたみのマットを広げればいつでもお昼寝ができる趣向です。プライバシーが保たれたテラスならではの醍醐味です。

 都会の混み合った場所にある戸建てやマンションのテラスやベランダでは、ここまで贅沢な空間はなかなか難しいかもしれません。けれど、この「居心地の良さ」をひとつかふたつ取り入れることで、みなさんのお宅もより素敵な空間に変身させることができるのではないでしょうか。

 次回は、プチリフォームをした空間にぴったりの、おしゃれで簡単なフードやドリンクのレシピをご紹介します。

文・写真◎坂井淳一
「今日は何を呑もう」から考える「酒ごはん研究所」主任研究員。ライター・フードジャーナリストとして多数のメディアに執筆。飲食店のレシピ開発やコンサルティングも行う。男性も料理をしよう、という「イエメシオトコ。」活動を展開中。料理のほか、住宅、旅行、アウトドアやIT、ガジェットなど幅広いジャンルをカバーする。

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