「野菜」として食べるハーブ
パクチーとルッコラ
ハーブは苗から育てるほうが簡単です。けれど、野菜として、たっぷり食べたいハーブもありますよね。
例えば、エスニック料理に欠かせないパクチー。中国で「香菜(シャンツァイ)」と呼ぶように、香り高い野菜と捉えられています。根っこまで食べる人も少なくありませんが、そうした使い方をするなら、一度収穫するとその株は終わりです。
また、苗が手に入りにくいハーブもあります。噛むとゴマのような香りが広がるルッコラ(イタリアではルゲッタ)がそうで、辛みの強さが特徴のセルバチコも、なかなか苗が売られていません。こうしたハーブは、種から育てるのが一番です。
パクチーは種の収穫まで楽しんで
パクチーの場合、種をまく前にひと手間が必要です。種は固い殻に覆われているので、軽く潰して一晩水に浸け、剥きやすくしておきます。このとき、ぐちゃっと潰してしまわないよう、あくまで殻にひびが軽く入る程度に。殻を剥くと、中には種が2つ入っています。
種をまくときは、第1回でご紹介した方法でプランターに土を入れ、土の表面に1センチくらいの深さの溝を二列作り、その中に1センチ間隔で一粒ずつまきます。丸い植木鉢なら、2センチ間隔くらいで全体にまきます。そして軽く土をかけ、種が出ないように注意しながら水を撒き、日がよく当たる場所に置きましょう。
水やりは一日一回、たっぷりと。早いもので3日ほど、遅くても2週間くらいで発芽します。
新芽がある程度育ってきたら、間引きを行います。この間引きを行うことで、より大きく丈夫なハーブに育つのです。パクチーは、双葉の間からギザギザの本葉が1~2枚出た頃が間引きのタイミング。株の間隔が3センチくらいになるようにします。
15センチくらいまで伸びたら、いよいよ収穫。外側の葉からはさみで丁寧に切り取ります。内側からまた新しい葉が伸びてくるので、続けて栽培、収穫を楽しめます。根を料理に使いたい場合は、優しく引き抜きましょう。
パクチーは一年草なので、花が咲き、秋口になると実がなって葉が枯れてきます。バジルなどと同様、夏の盛りの時期から花芽を持つことがあるので、長く葉を収穫したいなら、花芽が出たら摘んでおきましょう。葉が落ちて、実が茶色くなったら実の収穫どき。この実で来年も栽培を楽しんでみては。
収穫前にどんどん食せるルッコラ
ルッコラは、土に直接種をまくと簡単に発芽します。プランターに2本の筋を作ってまくといいでしょう。丸い植木鉢なら、全体に均等にばらまくようにします。まき終わったら、上から1センチくらい、薄く土をかけます。水やりをして、発芽を待ちましょう。発芽して芽がしっかりするまでは、水やりは優しく。乱暴に水を撒くと土の中に沈んでしまい、発芽率が落ちてしまいます。土が乾かないように、こまめに霧吹きなどで水をやっても良いでしょう。
しっかり芽が伸び始めたら湿度を嫌いますので、水やりは土が乾かない程度に。日当たりが良い場所にプランターを置きましょう。
発芽したルッコラ。伸びてきたら間引きをしましょう
ルッコラは、1箇所からたくさんの芽が出てきます。この新芽がある程度育ったところで間引きをします。まずは芽から本葉が2枚くらい出たときと4~5枚出たときの2回、行います。その後も定期的に間引いて、最終的に株と株の間隔が4センチくらいになるようにします。間引いた葉っぱは、もちろん美味しく食べることができます。
しっかり成長したルッコラの収穫は、他のハーブと同じように、株の外側から摘みましょう。
エスニック料理に欠かせないパクチー
牛すじとトマトのフォー。たっぷりパクチーをのせて香りを楽しんで 写真◎坂井淳一
パクチーは、東南アジア系のエスニック料理では定番の食材と言っていいでしょう。βカロテン、ビタミンE、ビタミンCなどが豊富で、免疫力を高め、身体を疲れにくくしてくれると言われます。
米の麺を使ったベトナム料理「フォー」のトッピングなども人気です。エスニック料理を自分で作るのはちょっとハードルが高いという方は、テイクアウトやデリバリーの料理に、フレッシュのパクチーを刻んでのせるだけで、美味しさが倍増すること請け合いです。
ゴマ風味を楽しむルッコラ・セルバチコ
ルッコラをエビ、トマトと炒めて。フレッシュなハーブがあると料理のアイデアも沸いてきます 写真◎坂井淳一
ゴマのような風味が人気のルッコラやセルバチコは、とても栄養価が高いハーブです。高い抗酸化効果のあるβカロテンやビタミンE、美肌ビタミンと言われるビタミンCに加え、マグネシウム、リン、鉄などのミネラル成分も豊富です。風邪の予防に、疲労回復に、そして美肌も期待できるのです。
ルッコラやセルバチコはサラダの野菜に混ぜたり、カルパッチョなどの上にアクセントとして添えるのが一般的です。ルッコラよりも香りや辛みが強いセルバチコは、ピリリとした辛みを活かすといいでしょう。また、日本料理や中国料理の素材として使ってみるのも面白いかもしれません。さらに、フルーツと混ぜて白和えにしたり、あるいは大量に使って炒め物にしたり……。工夫次第でさまざまな料理に活用できます。
お好みのハーブで癒しのライフを
全3回にわたってハーブの育て方と使い方を紹介してきました。今回紹介したハーブは人気があり、育てやすいものばかりです。これ以外にもハーブはたくさんあります。ソーセージの語源であるセージ、肉料理やトマトソースに使われるタイムやオレガノ、日本の代表的なハーブの紫蘇など、どれも鉢植えでも育てられる植物ばかりです。そうしたハーブたちが育っていくのを毎日眺めるのもまた楽しみのひとつ。
ぜひご自宅の庭やベランダ、窓際をハーブガーデンに大変身させて、楽しいハーブライフを過ごしましょう。
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