庭カフェ入門(第2回)

玄関まわりの一畳を「軒先カフェ」に!

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どんな家にも玄関前には空間がある

玄関脇であっても理想はこのような本格的な庭カフェ。しかし、玄関まわりのわずかなスペースがあればカフェはできる。(写真◎パシフィックW&S)

ごくごくありふれた引き戸の玄関まわりを整理した。日常そのものだが、逆に、何かできそうな予感。(写真◎三星雅人)

 住宅が密集した都会では、なかなか開放感を味わえる空間を確保するのが難しいと思いがち。しかし、たとえ狭いベランダでも、ちょっとした工夫で簡単に「庭カフェ」ができることを前回お伝えしました。
 この考え方を応用すれば、平屋など「庭カフェ」をつくりにくそうな家であっても、玄関先や縁側にカフェ空間をつくることができます。

「スペースが狭いか、広いかは問題ではありません。家の中と外を結ぶ空間は、非日常感にあふれているので、いかにそうした空間を活用するか、考えてみましょう」
 こう話すのは、ウッドデッキに特化した工務店パシフィックW&Sの志水洋太郎さんです。

 そこで早速、志水さんのアドバイスのもと、間口1間(180cm)のわが家の玄関前に「庭カフェ」をつくってみました。
 広さは1畳ほど。普段は無造作に鉢植えの花と、その脇にはメダカが泳ぐ火鉢が置かれたありふれた玄関です。

 まず、玄関前にあるものすべてを撤去しました。わずか1畳の空間ですが、何もないと案外、いろいろな空間として使えそうな気がしてきます。

 最初に決めたいのは、コンクリート床を活かすかどうかということ。
 今回は「雰囲気を変えたい」という思いもあったので、志水さんのアドバイスを受け、前回の「ベランダカフェ」同様ウッドパネルを敷いてみました。

 とはいえ玄関前を全面ウッドパネルにすると、出入りしにくくなってしまいます。
 そこで動線確保のため、ウッドデッキは半分だけ敷き、あとは使い勝手を考慮してコンクリートのままにしました。

街のカフェを意識して試作してみる

100円ショップで購入したウッドパネルを敷き、ハイキング用のテーブルとプラスチック製のイスを置いてみる。1人分のスペースは確保できた。(写真◎三星雅人)

 続いて、イスとテーブルの選択です。芝生の庭ならキャンプ用の折り畳み式のもので雰囲気を演出できますが、カフェ気分を味わうなら、街の通り沿いに置かれたイスやテーブルをイメージしたほうが、それっぽさが出るかもしれません。

 そこで利用したのが、湖畔やビーチにありそうなイスです。実はセットでテーブルもあるのですが、1畳のスペースには大きすぎました。ミスマッチを承知で、このイスに合わせたのは、脚の短いハイキング用のテーブル。
 それでも思い切って置いてみれば、意外とくつろげそうな空間に見えてくるから不思議です。

開放感とプライバシーの妥協点を探る

 もうひとつ注意したいのがプライバシーです。
 志水さんは前回、「目隠しがあると、開放感の中でもプライバシーを守れます」と、目隠しの大切さをアドバイスしてくれましたが、玄関先でも同じです。

道行く人よりご近所の洗濯物の方が気になり、タープで少し視界を狭くしてみるとなかなか快適に。(写真◎三星雅人)

 今回試してみてわかったのは、通行人の視線よりも、むしろご近所さんの存在のほうが気になるということ。実際、街なかのオープンカフェに座っているとき、道行く人も景色の一つになります。あくまでも個人の感想ですが、庭カフェでも、通行人はさほど気になりませんが、ご近所の洗濯物のほうが気になりました。

 そこで、夏の間、日よけに使っていた「よしず」で少し目隠しをしてみました。
 加えて、見上げれば青空は見える程度にアウトドア用のタープ(日よけ)を張り、直射日光をカットしてみました。オーニング代わりです。
 見た目は少々お粗末ですが、目隠し効果は十分に感じることができました。

 こうしてできた玄関先カフェで、さっそく鉄瓶でお湯を沸かし、日本茶をいれてみました。いつものお茶がぐっとおいしくなったような気がしました。

 ただ、秋とはいえ、まだ蚊が気になりました。
 虫が嫌がるというハーブを置いてみましたが、やはり蚊取り線香は必要でしょう。もう少し季節が進めば、ひざ掛けがあるといいかもしれません。

見た目はあまりぱっとしないが、オープンエア感覚は十分に味わえ、庭カフェとしては十分に楽しめる。靴を脱いでウッドパネルに足をのせてみると、さらにくつろげた。(写真◎三星雅人)

いつかは本格的な庭カフェで楽しみたい

いつかは本格的な庭カフェで非日常を体験したいもの。(写真◎平野晋子)

 ホームセンターでは、実にさまざまな素材の屋外用のイスやテーブルが販売されています。
 日よけひとつとっても、市民プールに置いてあるようなパラソルではなく、きれいに整理された西洋風の庭にマッチしそうなものも、手ごろな値段で購入することができます。

 しかし、まずは庭カフェのお試しです。
 玄関先や庭先に仮置きするものですから、設置も撤収も手軽にできるものがいいでしょう。

 理想的には、十分な広さがある庭にお気に入りのテーブルセットを設置して、のんびりと過ごす。あるいは、本格的なウッドデッキを設け、カフェとして、第二のリビングとしてくつろぐ……。そんなことができたら、どれほど気分がいいことでしょうか。

 次回は、庭はもちろん、屋上やベランダにジャストフィットするウッドデッキの設置法について、志水さんにアドバイスしていただきます。

(第3回に続く)

お話を伺たった方

志水洋太郎さん

しみずようたろう。パシフィックW&S株式会社代表取締役。
1947年、長野県・木曽の製材所に生まれ、木材に囲まれて育つ。大学卒業後、木材商社に就職し、国内はもとより、カナダ、南米、東南アジアなど海外で買い付けの経験を積む。30年前に独立、豊富な木材の知識を生かして一戸建てから集合住宅のベランダ向けウッドデッキの製造販売を行う。
http://www.pacific-wands.net/company/

文◎三星雅人
写真◎平野晋子、三星雅人、パシフィックW&S

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