玄関のつくりを考えることからはじめよう
日本の家屋は、一軒家にしても集合住宅にしても、玄関の扉1枚が戸外との接点になります。実は、ここが室内にいる犬や猫にとつてとても重要な場所なのです。
例えば、宅配便の人が訪ねてきたとき、ビンポンとインターホンが鳴った瞬間に犬は吠え、玄関に突進します。ドアが開いた瞬間、あなたの愛犬は、宅配便の人に飛びかかるくらいの勢いで威嚇するかもしれません。猫なら、外に逃げ出すかもしれません。実際、こんな苦い経験をされた方も少なくないことでしょう。
「犬や猫といったペットと暮らす家を考えるとき、まず玄関のつくりから変えることが必要」と、一級建築士でペット共生住宅の専門家の廣瀬慶二さんは提案します。
「日本の住宅は、玄関と廊下の間に間仕切りがなく、一体化しているのが普通です。ここに扉を1枚加えることで、人もペットも安心して暮らせる空間をつくることができるのです」
こうすると、玄関とリビングの間に緩衝地帯が生まれ、ピンポンとともにペットを玄関に向かわせないことができるのです。もう1枚の扉によって玄関への侵入を防ぎ、犬が来訪者に吠えたり、猫が外に逃げ出したりすることを防げるのです。
プラス1枚のドアが人とペットに安心感を与える
一戸建て、集合住宅に限らず、犬の鳴き声は、ご近所のクレームを受けやすい騒音です。「しつけて静かにさせろ」というクレームはつきもの。飼い主が最もストレスを受けることでもあります。
「ある程度はトレーニングによってムダ吠えはしなくなりますが、犬にとっては鳴くことが情報伝達の手段でもありますので、侵入者に対して鳴く、吠えるという行動を完全に辞めさせることはできません。ですから、扉をもう1枚設けることで、来訪者に直接対峙させない状況を物理的につくることが、大騒ぎさせないことにつながるのです」
猫は外が大好き。でも、屋外は危険がいっぱい。
来訪者は必ずしも犬好きとは限りませんし、直接吠えられて気分のいい人もいないでしょう。犬も人も不快な思いをしなくて済むのです。
では、猫はどうでしょう。猫は、外が大好きです。保護されたり、もらわれてきた猫は、外の生活を経験しているので、なおさら外に出たがります。
でも、家の外は、交通事故をはじめ危険がいっぱい。帰ってこられないようなことがあれば、迷いネコとして、再び野外生活を強いられます。屋外の生活は過酷です。家猫が猫人生20年時代を迎えても、野良猫の寿命は5年にも満たないといわれています。
「首尾よく戻ってきたとしても、人間にも害を及ぼすダニやノミなどを室内に持ち込むこともあり得ます。ですから、猫は家から出さずに飼ったほうがいいのです」
たった1つの扉で、家で飼い主にとっても、ペットにとってもストレスが軽減されます。既存の住宅であっても、これくらいなら大きな予算がなくても設置することはできるのではないでしょうか。
犬は情報を遮断する。猫は情報をいっぱい取り込む
それでは、ペットとともに快適に暮らすには、どのようなことを念頭において家を設計すればいいのでしょうか。
「それには、ペットの習性を理解することが大切です。犬の場合、テリトリーを守るという使命にかられますので、外が気になって仕方ありません。ですから、なにかあれば吠えるのです。この習性を逆手にとり、外の情報を遮断することで、安心させてやることができます」
具体的にはどうしたらいいのでしょうか?
「まず、外が見えないようにする。つまり、窓を少なくします。そして、遮音性能を高めることがポイントになります。例えば二重サッシを入れたり、内装材に重量のあるものを使ったりすると遮音性が増します」
扉の増設もその1つ。「情報を遮断」してあげることが、結果的に犬にとって余計な神経を使わず、快適な環境になるのです。
屋外よりも家の中が快適であることを覚えてもらうことが大切。
「逆に、猫は外を眺めるのが大好きです。広告などでも、窓辺から外を眺めている写真を見たことがあるかもしれません。外で何が動いているのか、いま聞こえてきたのは何の音だろうかと、常に外の情報を欲しがるので、窓を多めにつくることがポイントです」
拾われてきた猫は、どうしても外に出たがりますが、そういう猫には過酷な野外の生活より室内のほうが快適であることを覚えてもらうこと。おいしいごはんと、快適な寝床やトイレ、そして遊び場が大切だそうです。
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