気になる生活臭の対処法 第1回

におい対策の基本は換気&掃除

空間
玄関まわり
関心
お手入れ

住居の気密化がすすみ、
においがこもりやすくなった

 生活臭とは、油汚れや体臭、タバコのヤニ、ペットの糞尿など、家の中に存在するさまざまな原因物質の複合臭だといえます。祐川さんは、においがこもるひとつの要因に「住居の高気密化」を挙げています。

「24時間換気システムの仕組みとして、建築基準法では、1時間で部屋の空気の半分が入れ替わる『0.5回/h』以上を、必要な換気回数としています。この基準だと、理論的には部屋の空気が入れ替えるのに2時間必要だということになります。

 24時間換気システムだけでは部屋の空気が入れ替わるまで時間がかかるため、窓を開けてこまめに換気することが、対策において欠かせません」

 祐川さんによると、家のなかでもとくに玄関は風が通りにくく、においがたまりやすい場所だといいます。とはいえ玄関のドアを開けっ放しにして換気するのは、防犯面などから不安があるでしょう。ひとつの解決策として、祐川さんは、玄関に採風機能のついたドアなどを採り入れ、風通しをよくすることをおすすめしています。


LIXIL「リシェント玄関ドア3」


通気性のよい窓付きの玄関ドア。空気がこもりがちな玄関も、網戸付だから虫も入らず安心して換気ができます。

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 また、玄関は家の顔ともいえる場所です。急な来客時の対応として、窓を閉め台所の換気扇をつけると、外からの空気が室内に入ってくるので、お客さまが玄関に入った時に生活臭を感じさせずにすむそうです。

「家の換気扇の中でも特に排気量が大きい台所の換気扇の利用は、外気の取入量が大きいので家のなかの空気がフレッシュになります」

においの発生源にはすばやく対処を!

 換気とともに、発生源に対処することが最も大切だと祐川さんはいいます。

「発生源をほうっておくと、におい物質が浮遊し、物や床、壁などに付着しかねません。ご家庭での対策では、テーブルに油がはねたらすぐに拭く、生ゴミやペットの糞尿のような原因物質は放置しない、といったように、においが広がる前にできるだけ早く対処するのがポイントです」

カーテンやラグのにおいは洗って落とす

 におい物質がカーテンやカーペット、ラグなどのファブリック類に染み付いてしまった場合、洗濯できるものは洗って消臭しましょう。とくに、カーテンはできるだけこまめに洗うことを祐川さんは推奨しています。

「カーテンは部屋の面積を占める割合が大きいので、意外とにおいが染み付いています。シーズンごとに洗うのが理想的ですが、少なくとも年に1回は洗濯してください」

 発汗による体臭などを吸い込みやすいカーペットやラグも、洗える場合はこまめに洗濯を、洗えない場合は交換するのがおすすめです。

LIXIL「ユニットラグ」


手洗い可能なユニット状のラグカーペット。汚れがしみこみにくいPTT繊維で、水洗いでも汚れが落としやすくなっています。

壁紙に染み付いたら拭いて落とす

 におい物質が壁やクロスに染み付いてしまった場合は、洗剤をつけた雑巾で壁紙を拭き、においの元となっている壁の汚れを取り除きましょう。このときポイントとなるのが、「汚れに合った性質の洗剤を選ぶこと」だそうです。

「軽い汚れなら、台所用の中性洗剤を雑巾につけ、軽く拭くだけで汚れは落ちます。しかし、しつこい油汚れやタバコのヤニなどは、中性洗剤だけで取り除くのが難しいでしょう。その場合は、アルカリ性の汚れに対しては酸性の洗浄剤を、酸性の汚れに対してはアルカリ性の洗浄剤というように、汚れと反対の性質をもつ洗浄剤を使うと、汚れを落としやすくなります」

 家庭内の主な汚れのうち、水垢や石けんのカス、タバコ臭、尿などがアルカリ性、食べこぼしや生ごみ臭、皮脂や血液などのタンパク質の汚れが酸性です。

 なお、酸性やアルカリの洗浄剤は洗浄力が強く、手肌や壁紙などの素材を傷める可能性があるため、祐川先生は天然素材の洗浄剤を使うことをおすすめしています。

「代表的な天然素材の洗浄剤として、アルカリ性なら重曹やセスキ炭酸ソーダ、酸性ならクエン酸などがあります。これらの洗浄剤を薄めた液を雑巾に噴き付け、壁紙の汚れを拭き取ると、壁に染み付いたにおいが中和され、消臭効果を得ることができます」
※重曹は、鉱物からつくる天然素材のものと、塩(塩化ナトリウム)を電気分解でつくる方法のものがありますが、どちらも同じ重曹です。

カビ臭は塩素系漂白剤を使って落とす

 壁紙がカビ臭かったら、広がりを防ぐために一刻も早く除去しましょう。このとき、塩素系漂白剤を使って壁紙を拭くと、カビを死滅させることができるといいます。

「塩素系漂白剤を薄めた液に雑巾を含ませ、かたく絞ってから壁紙を拭いていきます。濃度は製品によって異なるため、容器の注意表示等をよくお読みください。また、塩素系漂白剤を扱う際には皮膚を傷つけることのないよう、必ずゴム手袋などをして直接に液に触れないよう気をつけてください」

→ 第2回に続く

〈お話を伺った方〉

祐川英基さん

祐川臭気コンサルタント事務所 所属。臭気コンサルタント。日本電子工学院 環境工学部 公害工学科卒。1976年〜2009年まで、民間の環境測定分析会社に勤務し、臭気測定等に従事。その後、独立して主に臭気に係る測定・ 調査・対策等に取り組み、現在に至る。
これまで、公益社団法人におい・かおり環境協会では、嗅覚測定法安全管理手法検討作業部会委員や脱臭技術評価部会委員を務め、現在、大同大学非常勤講師、公益社団法人におい・かおり環境協会副会長及び臭気判定士会会長を務める。
〈有資格〉臭気判定士、臭気対策アドバイザー、におい・かおり環境アドバイザー、環境カウンセラー(事業者部門)

文◎八木麻里恵 
人物写真◎加々美義人 
画像提供◎Shutterstock

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