家を守るかなめ……門・玄関まわり・フェンス大研究 [第1回]

美しい門や玄関、フェンスをつくるには

空間
玄関まわり
関心
ライフスタイル建築デザイン

家主の生活スタイルを門で表現する

 家の門は、家屋全体の印象を左右する重要な入り口であり、ここから敷地になるという境界でもあります。門一つで、家の印象が大きく変わり、また家主の家に対する思いもにじみ出てくるものです。

「私が新築やリフォームで門や玄関の相談を受けるとき、施主には最初にこう申しています。単なるモノとして見ないでください。商品として色や形、性能だけを検討して選ぶのではなく、家全体をどうしたいのか考えましょう、と」

 こう語るのは、テレビのリフォーム番組で「和の匠」として紹介された森村厚さん(森村厚建築設計事務所)です。

門扉はないが1本の門柱に家主の思いが表現されている。(写真◎森村厚建築設計事務所)

「例えば、防犯をしっかりしたいという家主の意志が、家のつくりや塀の形に表れますし、門や玄関にも表現されます」

 アメリカ映画で、郊外の敷地に、門や塀もなく家が建っている風景を見たことはないでしょうか。隣家との敷地の境界も気にしないおおらかな感じがします。逆に超高級住宅街では、高い塀に囲まれ、門扉も堅牢で、敷地内の様子もわからないシーンもあります。これも家主の意志の表現といえましょう。

 門や塀がなくても、「ここからが神域」と表しているのが鳥居です。もっともシンプルな「門」ともいえます。

 一般の住宅でも、2本の柱を立てるだけで、家全体の印象は大きく変わります。石やブロックを組んだもの、線路の枕木を再利用したものなどもいいでしょう。その柱が、家の顔になります。ご自身の好みに合わせ、門まわりをどうしたいのかを明確にして、家全体のデザインにマッチさせるのがベストです。

門扉は大きく分ければ2種類

門扉を引き戸にするだけで和風の味わいがでる。(写真◎森村厚建築設計事務所)

門から玄関までのアプローチが十分なら開き戸でも引き戸でも、家にマッチした扉を選べばいい。(写真◎森村厚建築設計事務所)

 門扉は大きく分けて、スライド式の「引き戸」か、押したり引いたりして開閉する「開き戸」の2種類があります。

 引き戸には、1枚扉の片引きや2枚扉で引き違いになっているもののほか、駐車スペースに設けられるジャバラ(アコーディオン)型のものもあります。

 開き戸には、1枚扉の片開きものと、2枚扉の両開きがあります。
 両開きの場合、普段は片側を固定しておき、大きな荷物を入れるときは両開きにすることができます。

 玄関の隣に駐車場があるような住宅では、玄関へのアプローチに開き戸、駐車場にジャバラ型の引き戸と、2つを併用することもあります。

 素材はアルミ製が主流ですが木製や鉄製でも作ることができます。アルミ製は耐久性が高く、軽いのが特徴。木製や鉄製はさまざまなデザインの製品がありますが、耐久性に劣ります。

「門から玄関までのアプローチが短ければ、開き戸よりも引き戸のほうがスペースを有効に使えるし、車いすの利用が想定されるなら、門扉をつくらないという選択肢もあります」

玄関ドアを変えてみる

引き戸なら奥行きがなくても大きな開口が得られる。(写真◎森村厚建築設計事務所)

 玄関の扉も、引き戸か開き戸の2種類です。引き戸は和風の住宅にマッチしますし、玄関まわりの空間にゆとりがない場合でも大きく開閉できます。開き戸に対して劣る点をあげれば、遮音性・遮熱性(床と戸の隙間が生じるため)と、防犯性(鍵の種類が限られているため)です。

防犯性やデザインの豊富さでは開き戸に分がある。(写真◎森村厚建築設計事務所)

 特にカギに関して、最近の開き戸はさまざまな防犯性能をもち、堅牢さという点で引き戸より優れていると思います。また、既製品を使用する場合、開き戸の方がデザイン的に豊富な点も魅力の一つです。
 和風住宅にマッチするタイプも増え、採光性においても、玄関のつくりを工夫すれば、引き戸とそん色ないものに仕上げられます。ショールームでは多くの見本と見比べられるので、家にマッチしたドアがきっと見つかるはずです。

家を囲む塀も、家全体のバランスを保てるように設置するとより美しく映える。(写真◎森村厚建築設計事務所)

 玄関の扉を変えるだけで、家のイメージは大きく変わります。それだけに、モノとみなして機能面だけで選ぶと、家全体のバランスが崩れる危険もあるのです。
 そういった意味では、家を囲むフェンスや塀も同じです。あくまでも全体のバランスをみながらリフォームの計画を立てていきましょう。

≪お話をうかがった方≫

森村 厚さん

森村厚建築設計事務所代表。人気テレビ番組「大改造!!劇的ビフォーアフター」で「和の匠」として登場、和風住宅のみならず、注文住宅、店舗、宿泊施設、集合住宅など、新築、リノベーションを問わず建築に関する設計を行う。和の魅力を発信するかたわら、家の耐震診断や既存住宅状況調査、遵法性調査など調査鑑定業務も。一級建築士。

文◎三星雅人
写真◎平野晋子、森村厚建築設計事務所

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