寒い季節の温浴健康生活[第3回]

医師が教えるお風呂の魅力!~温泉編~

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温泉の健康効果

「温泉」と聞くだけで健康に良さそうですが、具体的には普通のお風呂と何が違うのでしょうか。

「温泉は、温泉法という法律によって定められた成分を一定量以上含んでいます。通常のお風呂と比べ温熱作用も高いうえ、含有成分による人体への作用もあります。得られる健康効果はいろいろですが、多くの温泉で疲労回復や神経痛、冷え性などに効き目があります。そのほかの効能に関しては、泉質によってさまざまですよ」

 泉質とは、温泉に含まれている成分の種類や含有量、匂いや肌ざわりなどの特徴のこと。
 温泉は泉質によって10種類ほどに分類され、それぞれ決まった症状に効果があると国が定めているのだとか。

「温泉によって効果が期待される病状を、適応症といいます。適応症は、環境省の通知に従って定められているのです。泉質によって違いはありますが、おおよそ20ずつあります」

 温泉によって効能が違うため、温泉選びの際には適応症に注目する必要がありそうですね。

「温泉には、泉質名や適応症について書かれた掲示物があります。適応症も併記されているので、チェックしてみてください」

泉質別で見る効能の違い

 温泉の泉質がおおよそ10種類とのことでしたが、早坂先生によると、以下のように大きく2つのタイプに分けられるのだそうです。

「これらの中で入りやすいのは単純温泉です。不眠症やうつ病などの精神疾患にも効果があります。また、日本の温泉の3~4割は単純温泉なので、身近なところにあるのも魅力のひとつ。入浴時の刺激が少なく、まさに、万人向けの温泉といえます。疲れが強い時は低刺激の温泉がお勧めです」

「単純温泉」という名前から、「効果が薄いのでは?」と思われるかもしれませんが、温泉成分はしっかり入っています。

「単純温泉の次に数が多い塩化物泉は塩分を含んでいます。入浴後に肌についた塩分が汗の蒸発を防いでくれるため、非常に保温効果が高いのが特長です。切り傷や皮膚乾燥症、末梢循環障害などに効き目があり、湯あたりしづらいのも良いところですね」

温泉療法専門医がすすめる温泉の選び方

 一方、温泉を選ぶには、「効能」だけでなく「好み」を基準にすることも非常に大切なのだそうです。

「温泉の効能も、それぞれの人に合ったものでなければ意味がありません。結局、温泉を選ぶうえでは、自分はどんな温泉が好きか、どのような効果を得たいかが大切なのです」

 とはいえ、自分がどの温泉を好むのか、わからない方が大半でしょう。

「具体的に行きたい場所が思いつかない時には、国民保養温泉地に指定されている温泉がおすすめです。保養地として、心身ともに休まるような場所が指定されており、リフレッシュできる環境が整っています」

 国民保養温泉地とは、環境省が温泉法に基づき環境大臣が指定する「効果が十分期待され、かつ、健全な保養地として活用される温泉地」のことです。

 また、目的地の「行きやすさ、過ごしやすさ」も選ぶ基準として考えるべきなのだとか。

「行き先にたどり着くのが大変だったり、極端に寒かったり暑かったりと、体が休まりそうにない所も控えたほうが良いでしょう。『近場だから行ってみよう』くらいの感覚で訪れるとストレスなく楽しめますよ」

 温泉を選ぶとき、「源泉かけ流し」を意識して遠出する人も多いと思いますが、この点はこだわったほうが良いのでしょうか。

「温泉といえば『源泉かけ流しが良い』などと言われていますが、あまり気にしなくて大丈夫。もちろん加水していない源泉かけ流しのほうが成分は濃く効果も高いのですが、泉質にもよるものの循環させていてもほとんど効果が落ちない温泉が多いのです」

 日本には、3000近い温泉地、2万7000の源泉があります。これだけ身近にあって、健康効果も高い温泉。今後もぜひ恩恵を受けていきたいものですね。

■お話をうかがった方

早坂信哉さん

温泉療法専門医。東京都市大学人間科学部学部長・教授。お風呂や温泉について医学的に研究する第一人者。生活習慣としての入浴の重要性に注目し、20年以上にわたって3万人以上を調査している。明快な解説でメディア出演、講演も多数。主な著書に『最高の入浴法』『おうち時間を快適に過ごす 入浴は究極の疲労回復術』など。

文◎熨斗秀信
撮影◎平野晋子
写真提供◎Shutterstock

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